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新型コロナに関する天皇のおことば

 とはいえ、天皇自身はただ単に傍観しているのではなく、積極的に動いているようにも見える。

 日本国内において現在のように新型コロナウイルスの問題が深刻化していなかった2月21日の誕生日の記者会見で、「現在、新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されていますが、罹患した方々と御家族にお見舞いを申し上げます。それとともに、罹患した方々の治療や感染の拡大の防止に尽力されている方々の御労苦に深く思いを致します。感染の拡大ができるだけ早期に収まることを願っております」との発言をしている。3月22日の愛子内親王の学習院女子高等科卒業式においても、出席をせず、やはり新型コロナウイルスに言及した文章を発している。

4月10日、マスクを着用され、尾身茂氏からご進講を受けられる天皇皇后両陛下 宮内庁提供

 また、4月10日には尾身茂新型コロナウイルス感染症対策専門家会議副座長による進講が行われたが、その冒頭で、天皇からかなり突っ込んだ話があったようである。ところが、その話は宮内庁のホームページにも掲載されておらず、翌日の新聞各紙でも進講の事実や若干の言葉が紹介されるのみで、それほど大きくは取りあげられていない。つまり現状、宮内庁が天皇の行動や思いを伝えることがうまくできていないのではないか、とも思われるのである。4月28日になって宮内庁ホームページにその発言要旨(新型コロナウイルスに関する天皇陛下のご発言要旨)が掲載されたものの、2週間以上経ており、10日すぐに伝えられれば、その効果はもっとあったのではないか。

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直接会えないからこそ、ツールの検討が必要

 象徴天皇は日本国憲法の規程・理念上、イギリスのエリザベス女王が行った国民を鼓舞するようなテレビ演説をすることはなかなかに難しい。「おことば」が政治の対応を左右したり批判したりすることにつながらないようにする必要があるなど、その配慮はかなり大変でもある。

2016年8月8日、「象徴としてのお務め」についておことばを述べられた 宮内庁提供

 とはいえ、この新型コロナウイルスが人と会うことを難しくさせ、それゆえに今までのいわゆる「平成流」の継続だけでは難しくなっている今、新しい「令和流」のあり方を模索する必要に迫られているようにも思う。そしてそれは、アフターコロナウイルスの皇室のあり方に、新たな路線が生まれる可能性をも示唆しているように思われるのである。たとえば、自身の行動について積極的にSNSなどを通じて、人々に示すなどである。これは、先に述べた、これまで以上に人々に積極的に触れ合っていこうとする即位後の意思とも通底する。直接会えないからこその、ツールの検討が必要なのかもしれない。