「子どもは新しい環境に馴染もうと緊張し、不安を抱えている。先生たちはそういう心情に注意を払いながら信頼関係を作ります。個々の状況を把握するには、授業だけでなく休み時間や給食、登下校時の様子を観察することも大切。土台作りもないうちにいきなり教材だけ与えても、子どもはかえって学習意欲を失くしたり、勉強嫌いになってしまうかもしれません」
私立では「生徒全員が専用のノートパソコンを持って……」
公立校とは対照的に、私立の保護者は安心感を口にした。中学3年生の娘が中高一貫の女子校に通っているという母親(52歳)は、充実した学習内容をこう話す。
「生徒全員が専用のノートパソコンを持っていて、毎日オンライン授業が行われています。朝はメール形式の朝礼で出欠を取り、『体温測定しましたか?』などのアンケートに答える。午前中は国語と数学、英語の3教科の授業が設定され、午後には他の教科もあります」
数学では2種類のオンライン授業が実施される。教師の授業動画を見ながら教科書の問題を解くものと、「Qubena」という有料の学習サービスを利用するものだ。「Qubena」ではパソコン画面に表示された課題をタッチペンで解答、AIが正否を判定するなど個人に適した学習内容に誘導する。
公立校の教師が「むずかしい」と話した実技系の教科もある。たとえば家庭科は「手づくりマスクの型紙」が紹介されたり、家庭での食事作りを写真や感想文で記録するよう専用のシートが配布されている。
「具体的な内容が示され、先生からはこまめにメッセージが送られる。子どものやる気をじょうずに引き出してくれるので、親としても満足しています」
年間の授業料は約100万円。「満足」の対価として安いか高いかは判断が分かれるだろうが、学校ごとの学習格差は歴然だ。
すべての子どもに、「学ぶ」という基本的な権利をどう保証するのか。さらなる休校延長を前に教育行政の早急な対応が求められる。
