受験生を持つ親は「そもそも来年の受験が実施できるのか……」
一方、子どもが通う中学受験専門塾の指導は手厚い。週に4日、午前10時から12時30分までオンライン授業が実施され、web会議システムの「Zoom」で自由に質問できる時間も設けられている。
「月曜日は国語、火曜日は算数というふうに日替わりで授業があります。課題も毎日出されるので、1日に6時間くらいは勉強していますね。外出自粛中は子どもに代わり、保護者が週に1度塾に行って課題を提出しています」
塾のオンライン授業は通常の授業料が適用されるが、その金額は1ヵ月で4万円。「日曜特訓」などのオプションを選択すると、1~2万円の追加料金が必要だ。「こんな状況でも勉強できるのはありがたい」と話す母親だが、複雑な気持ちもあるという。
「休校の影響で学校の授業が夏休みにずれ込むと聞きますが、その時期は受験の天王山です。塾の夏季講習に通えなくなったり、そもそも来年の受験が実施できるのか、不安に思う保護者は多いんじゃないでしょうか」
「ふつうの公立校でオンライン授業をするのはハードルが高い」
文部科学省は4月21日、休校中の公立学校が実施する家庭学習についての調査結果を公表した。16日時点で休校中、または休校予定の1213の自治体のうち、教師と子どもが双方向でやりとりできるオンライン授業に「取り組む」と回答したのはわずか5%(60)。65の自治体では、新しい教科書の配布さえ済んでいなかった。
首都圏の公立中学校に勤務する男性教師(49歳)は、「ICT(情報通信技術)教育のモデル校ならともかく、ふつうの公立校でオンライン授業をするのはハードルが高い」と話す。
「まずパソコンの問題が大きいです。一家に1台とか、兄弟で共有している家庭がザラで、要は子どもが専用に使えるパソコンが家にない。Wi-Fiが使えなかったり、スマホのデータ容量が制限されていたりと、ネット環境の不備も考えられます」
仮に環境が整っても、今度はオンライン授業に適さない教科をどうするかという問題が生じる。たとえば理科なら実験器材を使えず、体育では集団競技や対抗戦を行えない。美術や音楽、家庭科など実技系の授業も、用具や設備を考えればむずかしいという。
休校が3月から4月という「年度替わり」の時期だったことも、学校現場の混乱に拍車をかけている。東海地方の公立小学校の校長(58歳)は、「入学や進級、新しい友達や担任との出会いなど、一年で一番大事な時期を失うのは痛い」と明かした。