昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/04/30

IOCと東京都が結んだ契約に書かれている内容

  IOC と東京都が結んだ開催都市契約「66.契約の解除」には、 IOC に大会中止の権限があると定めている。戦争や内乱などが例示され、新型コロナのような疫病は明記されていないが、「IOCがその単独の裁量で、本大会参加者の安全が理由の如何を問わず深刻に脅かされると信じるに足る合理的な根拠がある場合」に中止できるとする。「本大会が2020年中に開催されない場合」もIOCが中止を決める。

 つまり、今回の場合、IOCは開催・中止という2つの選択肢しか眼中になかった。安倍首相がバッハ会長との電話会談で延期を取り付けたのはギリギリの交渉だったとうかがえる。延期の代償に、安倍首相が追加費用の負担を飲まされたことは十分ありえた。

IOCバッハ会長 ©︎getty

 とはいえ、さすがに新型コロナ流行を日本だけの責任とするわけにもいかなかったのか、バッハ会長は独紙のインタビューで、IOCが「数億ドルの追加負担に直面する」との認識を示した。だが、その直後、IOCのジョン・コーツ調整委員は延期にかかる費用の負担ではなく、新型コロナで困っている国際競技連盟(International Federation, IF)などへの支援の意味だと、バッハ会長発言の火消しを図った。

 この後に公表されたIOCの追加負担に関する最初のFAQは、日本の財政負担の既成事実化を図ろうとしたと、見ることができる。 IOC はFAQを修正したものの、開催都市契約上の優位は揺らがない。

もともと膨む傾向にあった五輪関連予算

 一方、日本政府、特に安倍首相の立場は微妙だ。新型コロナ流行以前、日本政府は、オリンピック関連の支出を厭わなかった。新国立競技場の建設費が予定より増え、その後見直しを迫られた事例が示すように、関連予算は膨らむ傾向にあったことは否定できない。

新国立競技場 ©︎getty

 ところが、新型コロナ対応の遅れで国民から厳しい批判を浴び、補正予算の組み換えを余儀なくされた今、日本政府はIOCの言いなりに追加費用を負担するわけにはいかなくなった。IOCのFAQに対し、組織委を通じて珍しく強い態度で削除を迫ったのは、その危機感の表れだ。