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高級ホテルの賃貸料、資材保管料、人件費……

 それでは、追加費用はいくらかかるのだろうか。組織委の事務方トップである武藤氏が「積算されていない」と主張する以上、推測するしかない。

©︎iStock.com

 まず、各種競技会場の賃貸料や「オリンピック・ファミリー」と呼ばれるIOCやIFの委員が滞在する高級ホテルの宿泊料は今年と来年の2年分が発生する。競技によっては仮設の観客席設置に既に着手したところもある。この場合、いったん解体して資材を保管するなどの費用もかかる。

 また、競技団体は選手選考をやり直す場合もあり、経費増は避けられない。

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 このほか、組織委の人員は年初の約3000人から、大会期間中は約8000人に増やす予定で、人材会社を通じて募集していた。組織委は当初、20年度で解散する予定だったので、延期期間中の人件費も膨らむ。

 組織委には国や自治体、企業からの出向者も多い。新型コロナ対応で官民とも人手不足に陥る中、人的資源がオリンピックに固定されることは、見えない国民負担と言える。

追加費用約6400億円という試算も

 延期によりオリンピックの国内スポンサーの広告費負担が増え、組織委の収入が増える可能性はある。だが、自粛で消費が激減し、経営が圧迫される企業が、オリンピックの広告効果が以前と同様にあるとみて、費用増を素直に飲むのか、現時点では不明だ。

2013年9月、2020年五輪が東京開催が決定した瞬間 ©︎getty

 独統計調査会社スタティスタは東京2020大会延期に伴う追加費用を約6400億円と試算した。スポーツ団体の準備費用3900億円、競技施設の維持・管理費225億円、広告費等100億円だ。同社の試算は、観光や建設工事などの期待された経済効果約2180億円も含んでおり、これを除く実費ベースでは約4200億円となる。

 これに対し、組織委の予備費は270億円しかない。IOCが追加費用を負担しなければ、組織委が赤字に陥る可能性は高い。この赤字は東京都、国へと回され、最終的に国民が負担する。新型コロナ終息のめどは立っておらず、21年7~9月に東京2020大会が予定通り開かれる可能性は日に日に低下している。

 延期に伴う追加費用を負担したとして、オリンピックが開かれる保証はない。それどころか、IOCは再延期に否定的だ。最悪の場合、延期のための追加費用を国民が負担したあげく、オリンピックが中止になる可能性もある。

 オリンピックありきのツケは最後に国民が払う。これが東京2020大会延期の実情なのだ。