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自身の営みの中心には「描くこと」がしかとある
ではスタートはどこにあるのだろう。川内理香子の創作の「ひと筆め」は、どこからくるのか。
「それぞれの作品をつくるときの始まりの瞬間って、ほとんど思い出せないです。どうやって描いたのか、過程もあまり覚えていない。制作に充てる時間帯もとくに決まっていなくて、思い立てばすぐに筆をとります。何かすでに動かしている作品があるあいだは、頭がずっとオンになっている感じで、四六時中どこかで絵のことが気になってしまう。夜中や早朝に起き出して、すぐに『行かなきゃ』と、作品の前に駆り立てられることも多いですね」
そもそも絵を描き始めた時期も、あまりはっきりとはしない。
「描くことは好きで、ものごころついたころからいつも何かを描いていたみたいです。大きくなったら何になりたい? と訊かれれば『お絵かき上手』と応えていました。
7歳のとき、新聞に載っていた絵に強く惹きつけられたことがありました。どこかのお寺の天井画で、立派な龍の図。なぜかいたく感動して、それから3日間ほどぶっ続けで、その絵を模写しました。とくに龍の爪の部分が気に入ったんです。
その様子を見て母は『この子はこういう道に進むといいのかもしれない』と思ったそうで、よく美術館に連れて行ってくれたり、絵を習わせてくれたりするようになりました」
以来いつも、自身の営みの中心には「描くこと」がしかとあって、それはいまも変わらない。この生まれついての「描くひと」から創り出される作品を、実際に体験できる機会は、きっとそう遠くないはずである。