韓国では最高視聴率21.7%と、あの大人気作品「トッケビ」を抜いた人気作品となった、ファンタジーラブロマンス「愛の不時着」。韓国のポータルサイトNAVERでも、「愛の不時着」と検索すると劇中の名言を紹介したブログがたくさん出てきます。それだけ人々の心に響く詩のような台詞も印象的だったよう。
そしてその旋風は、日本へ。現在、Netflixで10週連続TOP10入りという人気ぶり(2月25日から5月5日時点まで)。私の周りにもヒョンビンロスになっている女性をよく見かけます。
また、普段韓国ドラマを観ない人たちもこのドラマにはハマったという声もよく聞くので、韓国人のオンニとなんでこんなに人気なんだろうね? と話していたのですが、「ヒョンビンだからね」で終了してしまいました。つまり、それが結論なのかもしれないのですが、人気の秘密を分析してみようと思います。
その1)「北朝鮮」というファンタジーな入り口を魅せる物語
私ははじめこそ、財閥令嬢が北朝鮮に不時着して現地の軍人と恋に落ちるなんて設定、非現実すぎて受け入れられない……と突っぱね、実は1度目の視聴は6話くらい飛ばして観たものです。ただ、最初はおもしろくないけど途中からものすごい勢いでおもしろくなるのは韓国ドラマあるあるなので、頑張って観たところ、予想通り魅了されたというわけです。
それもそのはず、このドラマの脚本家は、「星から来たあなた」「青い海の伝説」と、大ヒットドラマを手掛けてきたヒットメーカー。宇宙人や人魚、今作は北朝鮮と異世界の住人とのラブストーリーを描かせれば、右に出るものなし!なのです。違う世界で生きているが故に、切ない別れが待っている。それがわかっているからこそ、物語が盛り上がるというもの。視聴者の涙腺を崩壊させる作家です。
また、主人公のユン・セリが北朝鮮の奥様方のために贈ったセリズチョイスの商品名が「그리움(懐かしさ)」だったように、ドラマで描かれる北朝鮮は、どこか懐かしく、ノスタルジックな気持ちを呼び起こします。ファッションはもちろん、家の造り、家族や親しい人たちと食卓を囲むこと、人との繋がり。
特に印象深かったシーンは、北朝鮮の子供たちが家の近所で賑やかに遊んでいる場面です。夕暮れ時になると、母たちは子供たちを迎えに行き、それぞれの家に帰る。なんとも牧歌的な風景は、心に沁みました。ソウルで子供たちがあんな風に遊んでいる光景を見たことがないというところにも、韓国と北朝鮮の違いをドラマを通じて感じたのです。
セリのように、北朝鮮に対して「懐かしさ」を感じた韓国の人たちも多かったのではないでしょうか。