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最後の青波戦士、最後のPL戦士……なぜか我々は“最後の◯◯”に惹かれてしまう

文春野球コラム Cリーグ2020

2020/05/15
note

「最後のPL戦士」と「最後のダイエー戦士」

 では現行のオリックス・バファローズに「最後の◯◯」は存在しないのか。否。実は2名の「最後の◯◯」が活躍しているのをご存知だろうか。「最後のPL戦士」中川圭太選手と「最後のダイエー戦士」山崎勝己選手である。

 昨シーズン華々しくデビューした「最後のPL戦士」中川は、そのまま交流戦で首位打者を獲得、一気にその名を全国区にまで押し上げた。規定打席にこそ僅かに届かなかったが、打率.288、安打105は正にチームの主力を担う打者へと成長したと言えるだろう。開幕が延期になっていなければ今頃は首位打者争いを演じていたはずである。プロ野球が開幕した暁には、是非注目して欲しい選手の一人である。

 また「最後のダイエー戦士」山崎も未だ健在と言える。半ば2軍を中心に若手選手を育てる事にその役割をシフトしているとは言え、若月健矢選手を始めとしたチームの捕手陣にとっては、常勝軍団ダイエーで培った彼の経験そのものが、貴重で偉大なチーム共有の財産となっている事だろう。まぁ、山崎選手の場合は赤間謙選手が移籍した今となっては「最後の愛すべきパ顔」も兼ねていると言えなくもないが。こちらも要注目の選手である。

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 そして最後は「このコラム最後の『最後の◯◯』」で締めくくろう。確か井上陽水の「最後のニュース」が発表されたのは1989年だった。当時を思い返せばパ・リーグは戦国時代、いや本当に楽しいシーズンだった。仰木彬監督率いる近鉄バファローズが前年の悔しさを見事に晴らしリーグ優勝、2位のオリクックス・ブレーブスもオリックス元年をブルーサンダー打線と共に暴れまわった年だった。

 あれから31年。今年は皮肉にも、刻々と色々な物が日々様変わりする年となってしまった。全ての物事が大きく右往左往するのを見るに、誰もが皆、複雑な感情を抱いている事だろう。願わくば、望まない形での「最後の◯◯」の響きが訪れないよう、我々も様々な思いを胸に、少しずつでも希望と未来を向いて歩を進めたい。

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