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 代表チーム23人中18人が下痢の症状を訴える非常事態。試合直前までトイレにこもる選手がいる大変な状況で、腹を壊すことなく万全な状態で試合に臨めたのは鈴木氏を含めてわずか5人しかいなかったという。

「あのときは、普段から健康な腸を意識する毎日を過ごしていたのが良かったのだろうと思いましたね」と、しみじみ語る。

鈴木啓太氏 ©AuB Inc.

鈴木氏の健康のバロメーターは?

 08年に扁桃炎でシーズンの序盤戦を棒に振ったことも、日頃の健康意識をさらに高めることにつながった。便のチェックもより周到になった。

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「便にはプロセスがあります。ですから、毎日の変化を見て、その前に何をしたのかを思い返すようになったのです。どういう精神状態だったのか、どういう負荷がかかっていたのか、何を食べたのか」

2015年11月22日のJリーグ「浦和vs神戸戦@埼玉スタジアム」の試合後に、このシーズン限りでの引退を表明した鈴木啓太の引退セレモニーの様子(著者提供)

 現役を退いた今は、疲労回復のために多くのカロリーを摂ることに意識を割いていた現役時代と異なる視点を持つ。

「以前は栄養をどれだけ取るかにフォーカスしていたのですが、今は栄養をどれだけ吸収しているかに意識が向いています」と言う。

 そんな鈴木氏の健康のバロメーターは、40センチにも及ぶ特大うんちだ。

「トイレに入って、40センチくらいスルスルスルっと出たとする。そういうときって、ああ、調子がいいんだなと思うんですよ。下痢になったら誰でも調子が悪いのは分かると思うのですが、どういうときが調子が良いのかを知るには、これがいい」

Jリーガーたちをサポートする中で気づいた変化

 16年1月の引退後は、自身が立ち上げた会社でJリーガーをはじめ、28競技のアスリートのサポートを行なっている。その中でここ数年は、アスリートの意識が少しずつ変化していることを感じているという。寮生活で出された食事であっても、料理の内容を見て足りないものがあれば、それを補うことのできる選手が増えているそうだ。

「例えば、カツ丼と味噌汁だけではなく、そこに野菜をプラスして、副菜を用意して、フルーツを添える。そういうことをできる選手が増えています」

スケルトン日本代表の小口貴子選手に検査結果の報告をする鈴木啓太氏 ©AuB Inc.

 鈴木氏は、コロナ後、またはwithコロナの時代はどのように人々の志向が変わると予測しているだろうか。

「まず言えるのは、人は健康でなければ人生を楽しむことはできません。ですから、健康であろうとする意識が確実に高まることが予測できます。そうなると食生活にも変化が起きますよね。毎日好きなものを食べるだけではなく、数日間のトータルで足し算引き算をしてバランスを整える人が増えていくと思います」

 健康志向へのシフトと相まって、経済の大幅な落ち込みが人々の人生観を変えていくことも予想している。