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 新国立競技場や高輪ゲートウェイ駅でもおなじみの隈研吾先生がデザインを手掛けた立派な駅舎を出ると、駅前にはちょっとした広場とトリックアート美術館のようなものがある。駅の裏手には温泉施設もある。が、もちろんどちらも営業をしていない。5人くらいの降り立ったお客は高尾山とは逆の方向に消えていったから、登山客などではなく地元の人なのだろう。

隈研吾デザインの高尾山口駅の駅舎(2015年に完成)。この日はほぼ誰も見当たらない
通常のハイキングシーズンの駅前はこんな感じだ ©iStock.com

 小さな川沿いをケーブルカー乗り場に向かって歩く。その途中には土産物店やそば店が連なる一角があるが、すべて店を閉じている。とうぜんだが、誰も歩いていない。ここを歩いていることそのものが罪に感じられるような空間である。東京でいちばん有名な山の登山口に、GWに人っ子ひとりいない。これがコロナ禍、緊急事態宣言下なのである。

土産物店やそば店もすべて閉まっていた

 ものの5分程度でケーブルカー乗り場、清滝駅前に着く。ケーブルカーももちろん営業していない。営業していると「山は密閉空間じゃないから大丈夫」などといってやってくる人も少なくなさそうだから、営業休止はまさに妥当。広々とした清滝駅の駅前も、もちろん誰もいない……。

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登山道入り口にはひとりだけ……

 と思ったら、ひとりだけお兄さんがいた。