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“9割減便”のJALとANA「どっちが危ない?」「現金が底をつくまであと何カ月?」

公認会計士が分析する“コロナショック”

2020/05/12
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 新型コロナウイルスの蔓延により、多くの業種がかつてないほどの大打撃を受けている。中でも、航空業界は深刻だ。外出自粛により海外旅行や海外出張はほぼなくなり、国内の移動も激減したため、航空業界の主要な収入源である旅客収入は一転して大ブレーキとなった。しかも、航空会社はもともと、航空機や人件費など巨額の固定費が必然的にかかるビジネスであるため、景気後退の影響を大きく受けてしまうのが特徴だ。

 今からさかのぼること10年前、JALはリーマンショックと新型インフルエンザ流行で売上が減少し、巨額の固定費を賄いきれずに経営破綻した。新型コロナウイルスによる経済への影響は、リーマンショック以上とも言われている。2010年の悪夢が再び起こってしまうのだろうか。

2010年に経営破綻してから10年。再生の道を歩んできたJAL ©iStock.com

「コロナは2カ月間」なのに厳しすぎる決算

 4月下旬に、JALとANAが2020年3月期の決算を発表した。JALは売上高5.1%減少、営業利益42.9%減少となった。一方ANAも、売上高4.1%減少、営業利益63.2%減少である。なんとか赤字は免れたものの、非常に厳しい決算となった。

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 新型コロナウイルスの感染が拡大したのは2月頃なので、影響を受けたのは2月と3月の実質2カ月間のみである。にもかかわらず、これだけの減収減益を強いられたということは、次期2021年3月期の決算への影響は甚大になるだろう。実際、両社とも、新型コロナウイルスの終息時期が見えないことから、次期の業績予想を保留にしている。

ANA1ホールディングスが4月末に発表した決算。売上高は前期比4.1%減の1兆9742億円、純利益は前期比75%減の276億円となった ©共同通信社

JALとANA、どちらが赤字になりやすい?

 果たして、JALとANAはいつまで黒字を維持できるのか? 経営破綻の恐れはないのだろうか? 両社の財務諸表をもとに分析してみたい。

 新型コロナウイルスの影響を受け、JALは国際線の95%、国内線の70%を減便している。ANAもほぼ同様の減便だ。少なく見積もっても、平常時と比べて8割以上の売上減少となるだろう。