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 同じ方法で試算したところ、1,094億円のキャッシュ残高に対して、毎月の現金流出が873億円なので、わずか2カ月でキャッシュが底をつく計算になる。

(ANAの過去2年分の決算短信及び四半期決算短信をもとに試算)

役員報酬返上、ボーナス半減……大量リストラはあり得る?

 このような台所事情もあって、ANAは早々に金融機関から1,000億円の借入を行った。そして、融資枠として既存の1,500億円に加えて新たに3,500億円のコミットメントライン(融資枠)契約を締結した。このほか、いつでも換金可能な有価証券1,292億円を持っていることを考えれば、約10カ月(来年1月まで)は持ちこたえることができるだろう。

 JALの方も、1,043億円の新規融資を確保したため、ANAと同様、約10ヶ月(来年1月まで)の猶予を持つことができた。

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 手許のキャッシュを積み増したとはいえ、毎月の出費を抑えることも同時に必要となる。JALもANAも、人件費の削減や設備投資の抑制など、削減できるコストはできるだけ抑え、止血に全力で取り組む方針だ。すでに、役員報酬の自主返上や従業員の夏のボーナスの半減などの報道もなされている。今後の状況次第では、従業員の大量解雇に踏み切るかもしれない。

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 当初5月6日までだった緊急事態宣言は5月末まで延長となった。感染者数の減少傾向がみられなければ、さらなる延長も考えられる。コロナの終息時期はまだ誰にも分からず、感染拡大ペースが弱まったとしても、油断して自粛を緩めたとたん「第2波」が来る恐れもある。

 さらに言えば、仮に6月から全面解除になったとしても、航空利用者が急に増えるとは考えにくい。特に、国際線については、各国で入国制限や入国者の管理を強化している状況では、海外旅行や海外出張もままならない。当然、外国人観光客がコロナ前に戻るのもまだまだ先になるだろう。

 以上のように、未曾有の経営危機に立たされたJALとANAであるが、日本の航空輸送インフラとしてなくてはならない存在だ。一刻も早くコロナが終息し、需要が回復するまでなんとか持ち堪えてもらいたい。