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“コロナ就活”焦る大学生 それでも8割の企業が「採用人数は減らさない」って本当?

2020/05/13
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理由(1)採用中止は“突然降ってくる”

 知人のB社の人事が興味深い話をしてくれた。

「採用中止は経営層の判断で突然降って来るものなんです。上から中止と言われない限り、コロナ前から決まっている予算で、予定数を採り切るのが採用の常識だと思います。人事の現場の判断で、今年は少し減らそう等ということは当社ではあり得ません」

 緊急事態宣言のなか、選考が急激に進んだ背景には、このような現場の考え方があったのだ。しかし「採用中止はなぜ突然降ってくる」のだろうか? 採用コンサルタントの渡辺剛氏が理由を説明してくれた。

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「コロナ禍の中、経営者は新卒採用にまで関心がまわらないことが多いのではないか。まずは企業の存続、運転資金の確保、雇用の維持、取引先への支援などを優先します。当然ですよね。ですから新卒採用は優先順位が低くなる場合もあるのです」

 つまり新卒採用は経営層からしばらく放置され、一定の時間が経過したのち、採用中止が突然、現場に降りてくるのだ。それまで人事は「予定通り採用する」と回答するしかない。こういった企業が先ほどのアンケートの「8割」の中に含まれていることを認識する必要があるだろう。

マスク姿で合同会社説明会の会場に向かう就職活動の学生ら(3月撮影)。この後、コロナの影響で説明会や面接もリモートで行う企業が急増した ©共同通信社

理由(2)過去のリストラ報道の影響 

 また採用数を減らすことを決定していても、正直に答えにくい心理が働くこともあるという。A社の人事が理由を教えてくれた。