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一言でいうと、「気をつけて生きる」こと

 落語界の派閥とか流れからいうと、あり得ない選択肢だったんですね。けれど、文楽師匠やおかみさんが「当人がそう言うのなら」と正蔵師匠のところに弟子入りさせてくれた。

 僕の選択はまったく「空気を読まない」ものだったんだけど、正蔵師匠のところに行ってからは、面白いことたくさんがあって、いまだに師匠のエピソードを噺のタネにして、『彦六伝』で稼がせていただいている。人生で大当たりだったなと思っています。正蔵師匠はトンガリという仇名があったほど、直言居士というか、我が道を行くお人柄で本当に魅力的でした。

新宿末廣亭にて ©石川啓次/文藝春秋

 これを言うと驚かれるんだけど、入門したとき、僕はまだ正蔵師匠の落語をひとつも聴いていなかったんですよ。師匠が怪談噺をやっているということすら知らなかった。

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 だけど三木助師匠の葬儀のときね、お弟子さん(のちの橘家文蔵)の袴がちょっと崩れてたのを、正蔵師匠がスタスタッと歩いて来て、「ちゃんとしなくちゃダメじゃねえか」ってさっと直してあげてたのを僕は見ていた。ああ、あんな風に弟子に気配りをする師匠なんだ、いいなと思ってね。

 そのことも覚えていて、直感的に言葉が口をついて出たんです。

 直感を磨くには、昆虫がつねに触角を動かしているように、いつもあたりを気にして、感覚を張り巡らしてることが大事だと思うんですよ。アンテナを張って生きていると、何気ないんだけど本質的な情報を掴めるものなんです。

 だから、直感力といっても日ごろからの仕込みが大事で、ただの当てずっぽうじゃない。一言でいうと、「気をつけて生きる」こと、なんですね。

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林家木久扇(はやしや・きくおう) 

1937(昭和12)年、東京日本橋生まれ。落語家、漫画家。56年、都立中野工業高等学校卒業後、漫画家・清水崑へ弟子入り。60年、三代目桂三木助に入門。翌年、三木助没後に八代目林家正蔵門下へ移り、芸名林家木久蔵となる。69年、日本テレビ『笑点』のレギュラーメンバーとなる。82年、横山やすしらと「全国ラーメン党」を結成。92年、落語協会理事に就任。2007年、林家木久扇・二代目木久蔵の親子ダブル襲名を行う。10年、落語協会の理事職を退き、相談役に就任。20年、高座生活60周年を迎える。著書に『バカの天才まくら集』、『がんに負けるな! 免疫力を上げるポジティブ生活術』(共著)など。『笑点』最年長の“天然キャラ”として、国民的に親しまれている。