「そのうち給付金を名目にした詐欺事件の被害が発生すると思っていたが、早速というか、すでに次々と起きている」(神奈川県警のベテラン刑事)

 緊急事態宣言が延長され、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が社会の多方面に及ぶ中、警察で発生している「コロナ事案」の一つが「給付金詐欺」だ。

 全国民に一律10万円を支給する「特別定額給付金」。全国の警察を悩ませる詐欺事件とは、どういう手口なのか。前出のベテラン刑事が明かす。

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「最近のオレオレ詐欺をはじめとした『特殊詐欺』事件では、現金を受け取るのではなく、キャッシュカードをだまし取ってATMで現金を引き出す手口が流行中。この手法が『給付金詐欺』でも横行している」

役場職員(右)から給付金を手渡される女性(4月30日、青森県西目屋村) ©︎時事通信社

「10万円給付、代行します」

 具体的な手口の一つを、取材を元に再現してみよう。

 まず高齢者が住んでいる住宅をリストアップし、行政機関の職員を装い訪問。玄関先でこう声を掛ける。

「特別定額給付金の10万円が支給されるのはご存知ですね。これは手続きが非常に煩雑で面倒なので、高齢の方々の給付手続きの代行をするために特別に担当係員として派遣されてきました」

 そして、本題に入っていく。

「給付申請の代行をするにはキャッシュカードをお見せ下さい。スキャナーで読み取ることが必要です。暗証番号もお願いします」

 キャッシュカードを受け取ったら、作業する振りをしながら「印鑑も必要です」とお願いする。そして、高齢者が立ち去った隙にキャッシュカードを奪うのだ。

 高齢者が戻ってきたら、キャッシュカードではなく、コンビニのポイントカードの入っている封筒を、目の前で糊付けのうえ封印し、丁寧に扱っているかのように偽装するため捺印させる。

 最後に、「しばらくは封筒を厳重に管理して開けないでください」と一言添えて、キャッシュカードがコンビニのカードにすり替わっている封筒を返却し、発覚を遅らせる。犯人は、高齢者のキャッシュカードを持ってコンビニや銀行を連日まわって、一日の引き出し限度額を引き出し続ける。コロナ禍で出歩かない高齢者が被害に気付いた時には、残高はほぼ残っていない状態になるという。