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外出自粛解除後に集団感染…緊急事態宣言解除前に日本が知るべき韓国の事例

source : 提携メディア

genre : ニュース, 社会, 国際

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マスク着用者が減少…地下鉄での着用強制へ

また最近ソウルの街を歩いていると、マスクをしない人が目立つようになってきた。外出自粛要請の解除後に顕著に見られる現象で、緊張感の緩みを象徴している。韓国政府は外出時のマスク着用を呼びかけているが、従わない市民が増えているのだ。そのためソウル市は、5月13日から混雑時の地下鉄にはマスク未着用者の乗車を認めない対策を取る。マスクをしていない人については、駅舎内でマスクを販売するという。外出自粛期間中にはほぼ全員がマスクをしていたため、このような措置はなかった。自粛解除後にマスク着用を強制せざるを得なくなったというソウルの現状は、日本にとって示唆に富んでいる。

ソウルの繁華街ではマスクをしていない人の姿が目立つようになってきた

17日間感染者ゼロでも若者を中心に集団感染が発生

クラブでの集団感染が発生する前、実に17日間にわたってソウル市内の国内新規感染者はゼロを記録していた。3週間近く感染者が出ていなかったのに、集団感染が爆発的に広がった事は頭にいれておくべきだ。このウイルスが油断を許さない存在である事を如実に示している。

また現場になったクラブは密閉・密集・密接のいわゆる3密だった。ここに多くの若者が集まっていたのだ。若者は感染しても無症状もしくは症状が軽いケースが多い上に活動的な場合が多い。今回も、無症状感染者が無自覚に各地に散らばったために、感染が拡大した側面がある。日本でも緊急事態宣言解除後に、こうした感染しやすく拡大もしやすい施設の営業についてどうするのか、やれることは少ないかもしれないが、大きなリスクとして検討すべきだろう。

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集団感染が発生したクラブには、営業する際にはマスクの着用や消毒の徹底、来店者名簿の作成を義務づけるとの行政の張り紙が貼ってあった。連絡先の多くは虚偽のものだった

クラスター対策は万全なのか

実は、外出自粛要請解除後の集団感染は、韓国政府にとっては想定されていたものだった。ご自慢の検査態勢に加え、国民の行動を住民登録番号制度の活用で容易に把握できる韓国ならではの監視網によって、クラスターを押さえ込めるとの自信があったようだ。またクラブの営業については、マスクの着用や消毒の徹底、来店者の名簿の作成を営業開始の条件にしていた。実際に韓国政府は名簿を元にクラブの出入り客5500人余りを把握し、接触者へのPCR検査を猛烈なスピードで開始した。ただ、このクラブは性的少数者が集まる場所で、来店したことを隠すために虚偽の連絡先を記載していた人が多数いて、3000人程と連絡が取れなかった。