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「これ毎日やってるの……?」子連れママがマジギレしている理由が少しだけ理解できた――2019年 BEST5

令和を迎えた今でも解消されない世の中の矛盾

2020/05/19
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高すぎる「子育て」のハードル

 核家族化が進んでいる現在の日本では、今まさに子育てをしている当事者以外が想像するよりもはるかに、育児が厳しいものになっているように思えます。低賃金で、収入がなかなか上がらない環境で働く若者も多い。夫婦共働きでようやく生活ができるとはいえ、現行の出産後の産休期間や保育所が不足している状況、社会保障のシステムを鑑みると、まだまだ女性が早期に職場復帰をすることは難しいと言えるでしょう。

 会社を辞めざるを得なかった女性が、また働けるようになったタイミングですぐに就職口が見つかるかというと、それすら定かではありません。人事部で面接を担当する知人は、「1人の採用枠に子どもがいる女性を含む複数人が面接を受けにきた場合、申し訳ないながら、どうしても他の人と比べて不利になってしまう」と話してくれました。

「実家が太い」パターンであれば別だけど

 その女性本人がどれだけ優秀でやる気があったとしても、会社側からすると「子どもが熱を出すたびに休むのではないか」「定時前に帰らないといけないのではないか」という不安から、他の男性選考者の方が条件的に有利だと言わざるを得ない、と言うのです。

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 この言葉を聞いたとき、私にはこの知人の言っていることが間違っている、とは思えませんでした。会社にはより利益を生み出せるであろう人間を面接で選別し、雇用しようとする動機があります。国や政府がどれだけ「女性の社会進出を応援します!」と掲げようとも、こうした現状を無視し続けていては、決して少子化問題を解決することはできないでしょう。

 子どもが中学校を卒業するまで支給が受けられる「児童手当」は、毎月1万円から1.5万円ほど。生活の多少の足しになるとはいえ、「十分な保障額である」とも言い難い金額です。

 例えば両親から経済的な支援が受けられるとか、子どもを預かってもらえるような「実家が太い」パターンであれば、そこまでの苦労はかからないかもしれません。しかし実家も頼れない、自分たちだけで子育てと仕事をすべてこなさなければならない若者たちにとっては、子育ては非常にハードルが高く、子作りも慎重に行わなくてはならないものになっているのではないでしょうか。