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2020/05/19

「歌手やってて、知らないかもしれないけど」

 ふだん政治に声をあげない人も抗議しなければいけない事実こそマズい。国会で堂々とした議論が無いことがいよいよバレてしまった。

 あと、「歌手やってて、知らないかもしれないけど」と言うが、スターになるほど才能がある人は感覚が鋭いはずだ。その人たちが今回「おかしい」と気づき、声に出すことは“炭鉱のカナリヤ”的な役割を褒められることがあっても馬鹿にされる筋合いはない。どんどんつぶやけばいい。

 私が出演している「東京ポッド許可局」(TBSラジオ)では「ツイートは脳のおなら」と定義している。思ったことを気軽にうかつにつぶやけばいいのだ。

 ただしこれには条件があって、あくまで自分一人だけで「屁をこく」こと。人様に向かってこいてはいけない。臭くて迷惑だからだ。

 ところがおならを平気で他人にぶつける人がいる。いや、おなら以上に深刻なものをぶつける。だからクソリプというのだろう。文字通り「糞リプ」なのである。

 今回きゃりーぱみゅぱみゅさんは抗議のツイートをした理由を、

《私も自分なりに調べた中で思ったのは今コロナの件で国民が大変な時に今急いで動く必要があるのか、自分たちの未来を守りたい。自分たちで守るべきだと思い呟きました。》

 と説明している。

©︎getty

「自分なりに調べた中で思った」とか「自分たちの未来を守りたい」とか、歌手の本分に集中していたけど「代議士」が機能していないので不安になった証拠がまさにここにある。だから声に出した。有権者としてまっとうな態度ではないか。

 あの抗議ツイートを削除した理由は「ファンの人同士での私の意見が割れて、コメント欄で激論が繰り広げられていて悲しくなり消去させて頂きました」と説明した。

 これは彼女のやさしさであろう。

 本当は自分のリプ欄に置き捨てられる「おなら以上のもの」の臭いに耐えられなくなったのではないか。しかもよく読んだら「果たして本当に自分のファンなのか?」と気づいてしまった可能性もある。ファンでもなんでもない通りすがりのおっさんが悪臭を放っているだけではないのかと。きゃりーぱみゅぱみゅさんには同情しかない。

「だったら自分が政治家になってやればいい」という批判

 よく、抗議する人に対して「だったら自分が政治家になってやればいい」というタイプの批判もある。これも間接民主制からすればおかしい。

 ちがう例で説明してみる。10年前にこんな話題があった。

「橋下知事、遠藤選手の表彰時に息子3人会わす」(日経2010年8月26日)

橋下徹氏 ©︎文藝春秋

 大阪府の橋下徹知事(当時)が、サッカー・ワールドカップ日本代表の遠藤保仁選手に「感動大阪大賞」を授与する直前、橋下氏の息子3人を知事室で遠藤選手と会わせ、写真を撮ったりサインをもらったりしていた。これを「公私混同」と記者から批判された。

 正直言うと私は橋下氏の「僕は子どもを自由にどこかに連れて行ける状況にない」という言葉を知り、まぁそうだろうなぁと最初は思った。

 しかし次の「反論」を聞いておや? と思った。記者から「サインを欲しい子はたくさんいる」と指摘されると、

《「その子どもたちのお父さんに知事になってもらって(家族のプライベートが犠牲になる)苦しい親子関係を耐えてもらうしかない。いろいろあるかわりにサインをもらえるけどどう?という感覚」と言い返した。》(日経同)