“セオリー”を壊すことがバラエティ番組の醍醐味
――タモリさんの『いいとも』への取り組み方ってどんなでした?
名城 タモリさんは常に「無」でしたね(笑)。打ち合わせでこちらが提案しても「はいっ、はいっ、はーい」って感じで。雑談の方が長いくらいでした。
あるオーディション企画があった時に、Aさん・Bさん・Cさんって候補がいて、僕らスタッフは構成があるので「Cさんをいじってほしい」とお願いしたことがあったんです。タモリさんはいつも通り「はーい」って言ってたんですけど、いざ本番になったらBをいじるんです。それでBをめちゃくちゃ面白くしちゃうんです。
みんなが「こうだ!」って思っている“セオリー”を壊すことがバラエティ番組の醍醐味であり、生放送だからこその面白さだと教えてもらいましたね。ADからディレクターになったときも僕を導いてくれたのはタモリさんでした。
タモリに「そんな熱い気持ちはダメだ」と言われた日
――ディレクター時代にもタモリさんに教えてもらったことは?
名城 タモリさんは基本何も言わないんです。だけど、僕が『いいとも』のディレクターを担当することになって、嬉しくて嬉しくて。めっちゃくちゃに張り切ってタモリさんとの最初の打ち合わせで企画を熱弁したことがあったんです。
そしたらタモリさんが「ラリータ、そんなんいらない。そんな熱い気持ちはダメだ。もう帰れ」と言われたことがあって。あんなに熱弁したことがすごく恥ずかしくて。
――「熱いのはダメ」?
名城 そうなんです。熱意でなんとかしようとするのはディレクターのすることではないと。きちんと冷静に物事を見極めて、その上で面白いことを考えるのがディレクターの正しい姿なんだというのを教えてもらいました。