過去に文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。健康部門の第3位は、こちら。緊急事態宣言が解除されても、元の生活に戻るにはまだまだ時間がかかりそう。しかし、外出自粛中に「日光を浴びなかった」ことが、私たちの体に思わぬ影響を与えているかもしれません(初公開日 2019年10月29日)。
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9月、強風により甚大な被害をもたらした台風15号に続き、10月には台風19号の大雨で家屋浸水などの大きな被害が出ました。それに追い打ちをかけるように次々と台風や温帯低気圧が日本列島に迫り、曇りがちのどんよりとした日が続いています。
天気が悪いと心まで晴れず、家にこもりがちになる人がいるかもしれません。ですが、こんなときこそ、晴れ間が見えたらできるだけ外に出てほしいのです。というのも、秋から冬に向けて日照時間が短くなると、血中のビタミンDが足りなくなる可能性があるからです。
骨だけでなく筋肉も増強してくれる
ビタミンDは体内でとても重要な役割を果たしています。よく知られているのが、骨の形成を助ける働きです。食品から取り込まれたカルシウムは吸収率が悪いのですが、ビタミンDと一緒に摂ることで、小腸でのカルシウムの吸収が促進されます。
また、ビタミンDには神経伝達や筋肉の収縮などを正常に行ったり、筋肉中のたんぱく質合成を促進する働きがあることもわかってきました。つまり、骨だけでなく筋肉も増強してくれるのです。
女性は閉経後に骨を丈夫にする働きもある女性ホルモン(エストロゲンなど)の分泌が低下するため、50代以降に骨がスカスカになってもろくなる「骨粗しょう症」になりやすいことが知られています。また、高齢になって筋力が落ちると、転倒して骨折しやすくなります。
骨粗しょう症の人が転倒すると足の付け根の骨(大腿骨頸部など)を骨折しやすく、それがきっかけで寝たきりになる人も少なくありません。骨密度が低い人や椎骨(背骨の骨)、大腿骨頸部などを骨折した経験のある人は、将来の死亡リスクが高いという研究もあります(Suzuki.T Yoshida H. Osteoporos Int. 2010 Jan;21(1):71-9.)。
ですから、女性はとくに骨粗しょう症を予防するとともに、男女とも高齢期に筋力を落とさないよう心がけることが大切なのです。そのためにも、カルシウムとともにビタミンDを意識して摂ることが重要だと言えるでしょう。