オリンピックの当初計画は絶望的
――小池都知事になってからの1年間をどう見ていますか。
高木 都政がすっかり停滞してしまった。喫緊の課題はなんといってもオリンピックで、これは待ったなしです。ところが、時間軸を小池都知事がすべてひっくり返した。
本当にオリンピックがやれるのか。競技だけならやれるでしょうが、インフラやレガシー事業、文化プログラムはどうなるのか。
その象徴が築地、豊洲問題です。築地を豊洲に移転させて、跡地に環状2号線を通し、オリンピック期間中の駐車場に充てるという当初計画は、現時点で絶望的です。
時間軸を根底から覆すのなら、本来代案を示さなくては無責任です。それもなく、ただひっくり返した。
豊洲の問題に関していえば、平成26年に舛添要一都知事(当時)が安全宣言をしている。小池知事は、無害化を求めたそれ以前の議会の付帯決議を頻繁に持ち出しますが、それは平成22年のこと。小池知事が継承すべきは前知事の安全宣言であって、それ以前の議会の付帯決議ではない。
だいたい豊洲市場用地の地下水モニタリングは、法的要件ではありません。当時都議会でも民主党が第一党だったから、2年間の地下水モニタリングを無理やりねじ込み、都知事はその結果を見て、移転延期を決めた。今後、果たして安全宣言をできるんでしょうか。
――「都民ファーストの会」の都議を、どう見ていますか。
高木 自民党の場合、区議や市議など一定の政治経験者から都議候補を擁立してきたと思いますが、それとはまったく違う方法で選ばれ、政治とはかかわったことがない方々が多いと聞いています。果たして、それで、どこまで働けるんだろう、と疑問に思うところもありますが、逆に素人としての感覚を大切にして、今までとは違う都政をつくる努力をされるべきでしょう。選挙の時、「古い議会を新しい議会へ」、とこれまでの都政を否定したのですから、是非、それを広く都民に示して欲しい。
――「都民ファーストの会」の問題点も指摘されています。「情報公開」を掲げる公約とは裏腹に都議への取材制限がかけられており、メディアからの基本的な質問にも回答してくれません。都知事が自ら深く関与する政党の都議とともに都政を行う。独善的なものになる可能性を含んでいます。
高木 おそらく、素人と見られるのを怖れて取材を受けさせないのでしょう。でも、素人であることは皆、わかっているのだから、もっと明るく爽やかにやったほうがいいのではないかと思う。
それに都民の負託によって選ばれた都議なのですから、本来、自分自身の意見を持っていなかったらおかしい。「知事の考えと一緒です」と公言してはばからないのでは、都議会はいらない。地方自治は二元代表制、という原則が成り立ちません。議会と議員の意識は、常に都民のための与党であって、都知事のための与党であってはいけない。都議が忠誠を尽くすべき相手は都民なのです。それが理解されていないとすれば、都議会の危機だと思います。
私たちは、これからも真剣に都政のあるべき姿を考え、「都民の与党として」愚直に政策を訴えていく政治集団でありたいと思います。