7月2日に投開票が行われた東京都議選は、小池百合子都知事が率いる「都民ファーストの会」の圧勝に終わった。
 小池都知事への熱烈な支持が表れた結果と見る向きもあるが、一方には自民党に対する反対票として「都民ファーストの会」が受け皿になっただけだという分析もある。
 都議会自民党の議席は、57から23へと激減。幹部らも落選を喫したが、そのひとりである高木啓・都議会自民党前幹事長(東京都北区)に、現在の思いを聞いた。

(取材・構成:石井妙子)

当選すればそれで良いのか

――都議選の結果、自民党は多数の落選者を出し大敗しました。この結果をどう受け止めていますか。

高木 正直、ここまで自民党が負けるとは思いませんでした。ただ、当選すればそれで良いのか、という思いはあります。

 選挙も政治も、うまく立ち回るということではなくて、正しく行うことが大事だと思う。風に乗って当選だけすればいいとは思えない。今回、告示の直前に出馬を表明し、その選挙区でトップ当選をされた人がいましたが、有権者はなぜ、その候補者に入れたのか、その候補者の名前をいつまで憶えているのか疑問です。こうした状況だと、政治家が住民に対して真剣に向き合わなくなることを危惧します。最後は風に乗ればいいんだ、ということでは、政治家に愚直に努力させる状況にならない。これは政治の劣化を招くと思う。

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2005年から連続3期都議を務めた高木氏 ©文藝春秋

――石原都政の延長線上で都政を運営していきたいというのが都議会自民党の考えであり、小池知事はそれを否定する立場を取ったことで都民の支持を得たという図に見えますが。

高木 今の都政の基礎をつくったのは石原慎太郎元都知事です。財政再建は石原都政の最大の功績でしょう。プラス面のほうがはるかに大きいと思いますが、新銀行東京などは、確かに経営面での問題点もあった。でも、メガバンクが中小企業に貸し渋りをしている現状を改善したいという信念が、石原都知事にはありました。

 石原さんは、この話は傾聴に値すると思ったなら、とにかく徹底して聞く人です。相手がたとえ年下であろうと、キャリアがなかろうと。そういう意味ではとても謙虚な方です。でも、世間には逆のイメージで伝わっている。ぶっきらぼうで、傲慢であるように。実際はそうじゃないですよ。

 私も都議になって1年目の昼食会で、公会計制度が話題になった時、「売れない資産が積みあがっていく、この資産に対する会計処理はどうするのですか」と質問したことがある。そうしたら、「そうなんだよ。実はこの公会計制度の肝はそこにあるんだよ。知恵を出し合っていけば、もっといい会計制度になる」と身を乗り出して話してくれた。あの時は、僕も生意気にずいぶん意見を言ったんだけれど、本当によく聞いてくれました。

都議会に立つ小池都知事 ©文藝春秋

 逆に私は約1年間、小池都知事を見てきましたが、正直なところ何をおやりになりたいのか、まったくわかりませんでした。

 小池さんは広告代理店のような方でキャッチーな言葉遣いが得意でメディアもそれに乗った。都知事選で自民党は政策の面では誰にも負けないものを用意していたと今でも自負していますが、政策の議論にならなかった。