「家庭に子どもが使えるPCがあるのは本当にわずかで、Wifiの無い家庭も多いです。政府が1人1台端末を配布するといわれていますが、現場ではいつになったらできるのかという感じです。古いスマホだと1時間くらいZoomをやっていると、バッテリーが熱くなってしまい、途中で脱落していく子どももいます」
また学校側の対応にも問題が多いと渡辺氏はいう。
「お母さんから『子どもが1ヶ月間、私としか話していない。こんなことでいいのだろうかとすごく心配だ』という声もあります。学校からあまりフォローがなく、休校中担任から月に1回も電話がかかってこないそうです。オンラインでホームルームをやれるような学校は、毎日子どもの顔を見て元気かどうかわかるのですが、こうした学校は圧倒的に少ないです。学校はすべての子どもの個人情報があってつながれるので、セーフティネット的な役割が出来るはずですが、それをやれていない学校があるのではと非常に不安です」
「#9月入学本当に今ですか」
渡辺氏は「#9月入学本当に今ですか」というプロジェクトを設立し、署名サイトで賛同を募っている。渡辺氏はイギリスで子育てをした経験もあり、そもそも9月入学には賛成派だった。ではなぜいま反対なのか?
「9月入学自体はいいと思っていましたが、いまは絶対出来ません。もし決まったら、学校現場は9月入学の対応をしなければならなくなります。学校しか学ぶ場がない子どもに対する学習の遅れのサポートや、オンライン化への対応が出来無くなり、教育格差がより広がることは明らかなので、いまは絶対に止めてほしいです。平常時だって出来なかったのに、いまやるのはなおさら無理なわけで、なぜいまやるのかと思います」
9月入学で渡辺氏がもう1つ懸念するのは、修学期間が半年増えることによる家計の負担増だ。
文部科学省の試算によると、9月入学を導入した場合、小学生から高校生までの子どもを持つ家庭の追加負担の総額は2兆5千億円に上り、大学生らの負担増は1兆4千億円になる。