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戦後の日本を照らした“20代後半”

 そして、「おおらかで明るくて正直」な原節子の魅力を存分に味わうことができるのが、原節子が20代後半時の作品群だ。原の輝きは、戦争直後の日本を照らしていた。

芝山 『わが青春に悔なし』、『安城家の舞踏会』、『お嬢さん乾杯』、『青い山脈』など、戦争直後の作品をとりあげましょう。

 原節子は26歳から29歳。これらの作品の原節子は本当に明るいし、のびやかだし、それでいて正直で、人を寛(くつろ)がせる大きさみたいなものもあって素晴らしい。なかでも『お嬢さん乾杯』は、木下惠介監督がその輝きをうまくすくいとっています。

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芝山幹郎氏

石井 物語も明るく、没落した元華族のお嬢さんが、自動車修理工場経営で一財産築いた気の良い青年と織りなす恋愛コメディです。

佐野周二や上原謙と組むと光る

芝山 コメディですからテンポもいい。灰田勝彦の能天気な主題歌を何度も入れたり、終戦直後の銀座やお茶の水などの街頭風景を取り入れてみたり。さあ立ち直ろうという日本の姿と原節子が重なり、まさに時代のイコンの役割を担っていた。

石井 最後に「惚れております」と原節子が恥じらって言うセリフがまたいいですね。令嬢が殻を破った感じで時代の精神にも合っていて、作品は興行的にもヒットしました。

©OFUNA/Ronald Grant Archive/Mary Evans/共同通信イメージズ

芝山 原節子の浮世離れした風情は、佐野周二や上原謙のような、ちょっとお気楽な男優と組んでいるときの方が光るんですよね。

 1920年生まれの原節子は、戦争中は戦争映画、戦後は民主主義啓蒙映画への出演と、日本の歴史とリンクした女優人生を送った人でもあった。

出典:「文藝春秋」6月号

 2人が語る原節子の魅力「『原節子』生誕100年 映画ベスト10」は、「文藝春秋」6月号及び「文藝春秋 電子版」に掲載されている。

「日本映画史上、唯一無二の存在」である原節子の作品を、この機会に堪能してはどうだろうか。

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文藝春秋

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「原節子」生誕100年 映画ベスト10