久々に日本で韓流ドラマの人気が再燃している。ネットフリックスが全世界に配信している「愛の不時着」が、コロナ禍の日本でいま大ヒット中なのだ。
北朝鮮軍のエリート将校と韓国の財閥令嬢の愛の行方を描いたラブコメディ「愛の不時着」は、映画「パラサイト」の投資配給会社であるCJ ENM傘下の「スタジオドラゴン」が制作。韓国の売れっ子脚本家と韓流スター俳優がタッグを組み、韓国でも大成功を収めた話題作だ。
“韓流ドラマの王道”とされるラブコメは、日本や中国などで一番人気のあるジャンル。ただ、いまの韓国の視聴者はラブコメよりミステリーやホラー、ファンタジーなどの「ジャンル物」を好む。近年、純粋なラブコメはますます肩身が狭くなっていた。
そんな中、「愛の不時着」は、韓国のケーブルテレビ局tvNで放映された際、最終回(2020年2月16日)で21.7%という同局のドラマで史上最高視聴率を記録。さらに、SNSなどのインターネット上の露出度を踏まえて放送コンテンツの影響力を測る指標「CPI」でも、放送初週から放送終了までドラマ部門1位をキープするほどの人気を誇った。
■理由1:実際に起こり得るリアルな「愛の障害物」
「愛の不時着」はなぜここまで人気を誇ったのか。その理由について、文化評論家で東亜放送芸術大学教授のキム・ホンシク氏は「絶妙な状況設定が功を奏した」と説明する。
「韓流ドラマで描かれるラブコメをはじめとしたメロドラマには、“不可抗力の愛の障害”という装置が必須だ。過去によく使われたのが、『不治の病』または『身分の違い(財閥御曹司と孤児出身のヒロインなど)』だった。視聴者がこのような設定に飽きてきてからは、時間を越えたり、異空間の愛を描くタイムスリップ物が登場した。愛の障害物として、おばけや宇宙人が登場するドラマもあった。
『愛の不時着』は、この不可抗力の障害を設定するのに『国家の分断』という韓国の現実を使った。休戦ラインを挟んで敵対関係にある北朝鮮と韓国の若い男女が愛するという設定は、それだけで切なさを自然に感じられる」