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 ドラマでは、映画「私の頭の中の消しゴム」のソン・イェジン演じる韓国有数の財閥の令嬢・セリが、自身が経営する企業の商品テストのためにパラグライダーで飛行中に突風に巻き込まれ、北朝鮮に不時着してしまう。勤務中にセリを発見した北朝鮮軍将校のジョンヒョク(ヒョンビン)は、彼女を密かに自宅に連れて行き、極秘に保護するようになり、2人の間にはいつの間にか愛の感情が育つ。

 この設定について、ある放送関係者は次のような話を明かす。

「10年ほど前、ある女優が仁川の沖合でレジャーボートに乗っていたところ、気象悪化でNLL(北方限界線)付近までボートが流されてた事件があった。このエピソードがドラマの設定を考える上で参考になったという話を聞いています。その女優はNLLを漂流していたところを、韓国海軍の艦艇によって救助されたそうです」

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 つまり、セリの「不時着」は現実にいくらでも起こり得る事件なのだ。

 さらに制作陣は、リアルな北朝鮮の現実を描くため、アシスタントとして脱北者出身の作家を起用し、多くの脱北者にもインタビューを行った。

「脱北者たちを出身地域別、職業別に分けてインタビューを行い、北朝鮮住民の生活をほぼ完璧に再現しました。おかげで、これまで北朝鮮を題材にしたドラマや映画の中でも、最もリアルで客観的な視線で北朝鮮の実状を描いたという評価を受けています」(前出・放送関係者)

 こうやって、北朝鮮というリアルな「愛の障害物」を見事に作り上げたのだ。

■理由2:日常的に停電する「アナログ感」が人を引きつける

「愛の不時着」では、北朝鮮の街が突然停電したり、その影響で列車が停まったりする場面が登場する。国際社会の対北朝鮮制裁によって、中国から電気供給が中断された北朝鮮では、列車が止まることが日常茶飯事なのだ。

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 ところが、「ラブコメの天才」ともいわれる脚本家、パク・ジウンはそれを見事に「胸キュンする」瞬間にかえってしまった。前出のキム教授は、そんなシーンも視聴者を引きつける理由の一つだという。

「停電のシーンをはじめ、北朝鮮だからこそ可能なロマンスが視聴者のアナログ的な感性を刺激している。北朝鮮将校のジョンヒョクは、セリへの愛の感情を決して表に出さないが、命をかけて愛する女性を守る“純情男”だ。いまの韓国男性はジョンヒョクのような愛を貫けるだろうか。70年代、80年代の韓国の姿が、このドラマの中の北朝鮮社会やジョンヒョクの姿にオバーラップするんです」