昭和・平成を通じて日本を代表する漫画家のひとり、ジョージ秋山さんが亡くなった。享年77だった。代表作のひとつ『浮浪雲(はぐれぐも)』は、小学館の「ビッグコミックオリジナル」で1973年から連載がスタート。1978年には渡哲也、1990年にはビートたけし主演で2度にわたってテレビドラマ化もされ、2017年に連載を終了した。じつに約44年。ジョージさんにとってはもちろん、日本の漫画界においても至高の宝だろう。堂々たる偉業を終えたジョージさんは、新作の構想に意欲を燃やしていたという。本人も無念の早逝だろうが、一ファンとしても無念だ。コロナ禍の渦中、またひとり日本の財産が失われてしまった。
ギャグ漫画から社会派作家へと衝撃の“転身”劇
ジョージ秋山さんは1943年4月27日生。東京都日暮里のご出身。第二次世界大戦を経て中学卒業と同時に疎開先の栃木県より上京。講談社への自作持ち込みを続け、編集者の紹介でギャグ漫画家の森田拳次氏に弟子入り。ことギャグ漫画に関しては、キャラやコマ運び、ギャグセンスに至るまで森田氏の『丸出だめ夫』(’64年)を彷彿とさせるのはそのため。
確かにジョージさんの最初の大ヒット作『パットマンX(タイトルから某アメコミヒーローのパロディであることは容易に想像がつくだろう)』(’67年)を初めて読んだときに「アレ?『丸出だめ夫』の先生が変名で描いてるんだろうか?」と子供心に思ったものだ。以後、少年誌に『ほらふきドンドン』(’69年)、『デロリンマン』(’69年)などのギャグ漫画を続々と発表していく(『デロリンマン』を単なるギャグ漫画と言い切ってしまっていいかはいささか疑問だが……)。
ところが1970年に突然、“らしくない”作品を立て続けに2作発表して当時の少年ファンを困惑させた。ひとつは「週刊少年サンデー」(小学館)連載の『銭ゲバ』、もう1作は「週刊少年マガジン」(講談社)連載の『アシュラ』だ。前者は’70年に唐十郎主演で映画化、’09年には松山ケンイチ主演でテレビドラマ化もされた。