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「次は日本人横綱を育ててみたい」

 この高砂親方と朝乃山の発言は、「文藝春秋」6月号に於ける「新大関師弟対談『横綱を狙います』」と題しての対談で、収録は4月初めのことだった。五月場所が「無観客開催か、中止か」と、決定がなされていない混乱の渦中でもあった。「不安だろうが、かかったエンジンはそのままでな」と、親方は師匠として、また大関の大先輩として数々のアドバイスを含ませている。

 思えば、現役時代は“大ちゃん”の愛称で親しまれた、元大関朝潮の高砂親方である。その明るいキャラクターと軽妙な語り口の蔭で、大関取り挑戦は実に7度。優勝決定戦に臨むこと3度も、ことごとく阻まれ、初賜杯を抱くのに苦労した大関だった。高砂親方曰く「(入門)当時は光るものがまったくなかった」はずの愛弟子が、平幕で初優勝し、入門以来わずか4年――大関を一発で手中にした。自身を振り返りつつ「我が弟子ながら『すごいことだ、よくやった』と思うよ」と手放しで褒めるのだ。かつて“暴れん坊横綱”朝青龍の師匠として苦汁を舐めたこともある親方が、「次は日本人横綱を育ててみたい」と語っていたのを、今、思い出す。

高砂親方と新大関の朝乃山

 今年12月、65歳になる高砂親方は停年退職を迎える。「周りが勝手に『それまでに横綱に!』と感動ドラマの筋書きを書くけど、そんなことは考えなくていい」と愛弟子を気遣う。しかし朝乃山は、「停年まであと8ヶ月ですね……」と、初々しい笑顔を引き締め、目に力を宿していた。「相撲取りは本場所の土俵で恩返しするしかないです」と、きっぱりと言い切っていたのだった。

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雌伏の日々を送る新大関の行方は?

 “究極の濃厚接触”にあたる“ぶつかり稽古”や、本場所さながらの相撲を取る“申し合い”の稽古には、今もなお慎重な姿勢の相撲界。協会員約1000人が新型コロナウイルス抗体検査を受け、未知のウイルスに関する統計調査のひとつとして、これは意義をもたらす形ともなるのでは、と耳にする。

 ウイルスという見えない敵と戦いながら、雌伏の日々を送る新大関。師匠に奨められた縄跳びを日課に、虎視眈々と、いつか来るであろう「その日」をしかと見据えている。

(……と、格好良く締めてはみたものの実際は『師弟による爆笑対談』です)

出典:「文藝春秋」6月号

 師匠と弟子が知らずして同じ言葉を使った伝達式の口上秘話、師匠が教えるマスコミ対策、朝乃山の部屋に対する想いまで縦横無尽に語った、「新大関師弟対談『横綱を狙います』」は「文藝春秋」6月号および「文藝春秋 電子版」に掲載しています。

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文藝春秋

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新大関師弟対談「横綱を狙います」