新型コロナウイルス感染拡大を受けての緊急事態宣言が解除され、徐々に経済が動き始めている。しかし、緊急事態が解けただけで安全宣言が出たわけではない。第二波、第三波に備えて、多くの人は「なるべくなら家で過ごす」という警戒心を持ち続けている。
それはとてもいいことだが、必要な外出まで制限している人もいるようだ。「歯科受診」を控えている人が少なくないのだ。
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歯科医療の現場は感染リスクが高い?
日本歯科医師会は、各都道府県歯科医師会を通じて緊急アンケー
なかでも東京都の落ち込みは大きく、対前年比35%減。勤務先に近い歯科医院をかかりつけにしている人が在宅勤務に移行したことで歯科治療にも行きづらくなったのかもしれない。東京に限らず、地方よりも都市部のほうが患者減少の割合は大きく、“クラスター”が発生した医療機関がある地域での減少率が大きい、という傾向も見られる。
歯科医院経営者に外来患者数増減の実感を訊ねると、「大幅に減った」(44.7%)と「やや減った」(47.7%)を合わせた9割以上が「患者減」を訴えている。理由は何なのか。
「『歯科医療の現場は感染リスクが高い』というマスコミ報道があり、これを誤解した多くの国民が歯科受診から遠ざかっているようです」
と答えるのは、日本歯科医師会会長の堀憲郎歯科医師。
その誤解について、堀氏が続ける。
「『感染リスクが高い』という指摘は、万一新型コロナウイルス感染者が歯科医療機関を受診した時に歯科医師や歯科衛生士などのスタッフに感染する危険性を指したもの。つまり、患者ではなくスタッフの危険性を指摘しているのです。ところが報道を見た人の多くがそれを逆に解釈した上、『歯科医療の現場は“密”である』というイメージも重なって、外出自粛の対象を歯科治療にまで拡大してしまったのでしょう」
歯科治療を通じての新型コロナ感染例は報告されていない
ならば実際のところ、歯科治療の現場の感染リスクはどうなのか。日本歯科医師会常務理事の小山茂幸歯科医師が語る。
「歯科医療現場では、この騒動の前から、マスク、ゴーグル、手袋の使用などをスタンダードプリコーション(標準的予防策)として徹底してきました。つまり、感染症対策という点では、元から高水準の基準が設けられていたのです。それに加えて今回の緊急事態宣言により、スタッフの検温実施や医局や控室での“3密”の回避など、より慎重さを求める提言を行っています」