実は、池田組では2016年5月31日、当時の若頭が、6代目山口組傘下の元組員に、岡山市内の駐車場で、銃殺されている。今回の事件当日に行われていた法要とは、この前若頭の法要だった。つまり、池田組では若頭が2代続けて、6代目山口組系の人物に銃撃されたことになるのだ。
絶縁した者に「業界のルール」は適用されない?
今回の事件で暴力団関係者が衝撃を受けたのが、法事の直後に銃撃されている点だ。
「法事の日にケンカを仕掛けるのは、この業界では禁じ手だ。しかし、いまの6代目山口組にしてみれば『何ら問題ない』という考えではないか」
岡山の銃撃事件の経過を聞いた指定暴力団幹部は、このように感想を漏らす。
「神戸山口組系の池田組は、6代目山口組側からすれば『絶縁処分』にした組織。だから、今となってはヤクザ業界とは無縁の人たち、という認識なのだろう。つまり、業界の人でないのだから、法事の日に銃撃したところで、業界の不文律も関係ないというわけだ。山口組の中では正当性があるという論理が成り立っている」(同前)
つまり今回の事件は、昨年秋に出所して以来“武闘派ヤクザ”として存在が際立っている6代目山口組若頭の高山清司のいる現体制なら十分にありうる、「ノールール銃撃」「ノールール・カチコミ」だったというわけだ。
池田組組長は5代目時代の最高幹部
今回銃撃された側の池田組は、どういう存在なのか。
池田組組長の池田孝志は、直参と呼ばれる山口組の直系2次団体に取り立てられ、5代目山口組組長、渡辺芳則の秘書役を担当していたこともあった。池田は金融など幅広くシノギ(資金獲得活動)を手がける“経済ヤクザ”として知られ、豊富な資金力を誇っていた。山口組在籍時の最後は「舎弟」という立場の最高幹部だった。
しかし、山口組が2015年8月に分裂した際に、池田組は、山健組など12の2次団体とともに離脱し、神戸山口組に加わる。
分裂に際して、池田は、山健組組長の井上邦雄(現神戸山口組組長)、宅見組組長の入江禎らとともに、山口組から「絶縁」処分にされている。
将来的に組に戻ることもある「破門」にくらべて、「絶縁」という処分は極めて重い。組への復帰は許されず、関東に拠点がある住吉会など他の暴力団組織に対しても、絶縁者たちと友好関係を持つことを控えるように要求している。つまり、ヤクザ業界からの永久追放を意味するのだ。
銃撃した岸本が所属する6代目山口組系の大同会は、鳥取県米子市に本部を置く2次団体。会長の森尾卯太男は6代目山口組の最高幹部の一人だ。現体制の本部長の役職を務める実力者が率いる組の幹部による犯行だけに、銃撃の動機についてさまざまな憶測を呼んでいる。