そして結局、今回の財産差し押さえ命令の「公示送達」に至った。公示送達とは、被告側が書類の受け取りを拒否したりした場合に、裁判所ホームページなどに一定期間公示することで受け取ったとみなす手続きだ。公示期限は8月4日午前0時で、その後売却・現金化に向けた次の段階に進むことになるとしている。
WTOの問題と意図的に時期を一致させたのかどうかは不明だ。しかし、司法サイドに忖度があったと見ても不自然ではない。
総選挙に大勝して“やりたい放題”
なぜ、文在寅大統領は、急に日本に対して強硬策を連発してきたのか。
背景の一つとして、国内政治が政権与党に有利な状況になったことが挙げられる。
4月の総選挙で左派系与党「共に民主党」は歴史的な圧勝を遂げた。国会300議席のうち177議席を占める“スーパー与党”となり、文政権と与党が気兼ねする相手はいなくなったに等しい。日本に対する今回の措置も、そんな“やりたい放題”の中で行われた政策の一つと言っていい。
また、国内に向けて、ある種の示しをつける意味もありそうだ。韓国社会が大きな衝撃を受けた輸出管理厳格化から7月で1年の節目になる。徴用工訴訟も最高裁判決から1年半あまりが過ぎた。韓国の総選挙も終わったいま、相手が他ならぬ日本ということもあり、ただ放っておくことに世論は黙っていないというわけだ。
韓国をさらに勢いづかせていることがある。WTO提訴の手続き再開を発表する前の5月31日、トランプ米大統領が9月に米国で開く主要7カ国(G7)首脳会議に韓国を招待したのだ。
ロシア、豪州、インドといった大国の首脳とともに文大統領も招かれたことに、政府もメディアも「G11の誕生に韓国が加わった」と、手放しで称賛されている。
李秀赫(イ・スヒョク)駐米韓国大使に至っては、ワシントンでの記者との懇談会で、「われわれは(米国と中国から)選択を強要される国ではなく、選択できる国という自負心を持つ」とまで語った。この「韓国はもはや同盟を選択できる」とでも言うような“浮かれた発言”に、米国務省がクギを刺すようなコメントを出したほどだ。