文在寅政権の韓国が、ふたたび日本への強硬姿勢を見せている。
韓国政府は6月2日、日本政府が昨年7月からとっている韓国への輸出管理厳格化の措置が続いていることに対し、世界貿易機関(WTO)への提訴の手続きを再開させると発表した。
これに加え、いわゆる徴用工訴訟で韓国最高裁が2018年10月に新日鉄住金(現・日本製鉄)に賠償を命じた問題で、大邱(テグ)地裁浦項(ポハン)支部が6月1日付で日本製鉄に財産差し押さえ命令の「公示送達」を決めた。
このタイミングでの立て続けの対日攻勢に、日本では「コロナ後の混乱を狙ったのではないか?」「連日疑惑が報じられている慰安婦支援団体のスキャンダル隠しでは?」など、文政権の腹の中を探るような憶測まで出ている。
GSOMIA破棄を再びチラつかせる
WTO提訴の再開については、伏線があった。
韓国政府は5月12日、日本に対して一方的に「輸出管理厳格化の解決策について5月末までに立場を示すように」と求めていたのだ。
韓国は、日本側に輸出規制厳格化の原因とされた「不十分な貿易管理体制」について、貿易管理に関する法律を改正し、貿易安保政策官というポストを新設するなど、必要な措置は講じたと主張。それにもかかわらず、日本が措置を見直さないのは、「日本政府が問題解決への意思を見せていないからだ」(韓国産業通商資源省)としていた。
「日本との議論は進展していない。正常な対話の進行とはみなし難いと判断した」
というのが同省の言い分。韓国政府としては“業を煮やした”という形を取って、WTO提訴の手続き再開を発表したわけだ。輸出管理厳格化から間もなく1年。この措置が解かれない場合、韓国政府は8月に日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を再び持ち出すことまで、すでにチラつかせ始めている。
さらに、冒頭で紹介したとおり、徴用工訴訟をめぐって裁判所による日本企業の財産差し押さえ命令の「公示送達」が出された。
日韓関係を根底から揺るがせた徴用工訴訟の韓国最高裁の判決からのこの1年半あまり、いたずらに時間だけが過ぎ、何ら韓国側は手を打てなかった。