好き勝手にモノを言える相手は……
もちろん文在寅政権に懸念材料がないわけではない。むしろ課題は山積している。
5月に元慰安婦の女性が、支援団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)と前理事長の尹美香(ユン・ミヒャン)氏を批判したことで、正義連と尹氏による寄付金の不正会計疑惑などが大きな社会問題となっている。ついには正義連の関係者が自殺する事態にまで発展。尹氏はこの疑惑の最中に、与党「共に民主党」の国会議員となった“身内”だ。
文大統領は8日、大統領府での会議でこの問題に初めて触れ、募金活動の透明性の強化などを求めると同時に、「慰安婦運動の大義をしっかり守らねばならない。大義を傷つけようとするのは正しくない」と強調した。
また、韓国は今、一時は克服したかに見えた新型コロナウイルスの感染が、首都圏を中心に再び広がっている。日本同様、コロナ対策で手一杯だ。文大統領自身が言っているように、新型コロナがただでさえ深刻な状態の韓国経済を脅かしている。
加えて、対北関係改善を最重要課題の1つとする文在寅政権だが、北朝鮮からは揺さぶりを受け続けている。6月9日には南北共同連絡事務所の通信回線を完全に遮断すると表明され、南北関係は行き詰まる一方の状態にある。
そんな厳しい状況の中で、好き勝手にものを言って国民にアピールできる相手は日本しかない。
総選挙で圧勝し、G11構想に沸く文在寅政権の韓国にとって、対日外交などは二の次。日本で憶測が出ているような狙い澄ました対日強硬策ではなく、文在寅政権の日本軽視から生まれたご都合主義の外交姿勢が、強硬策のように見えるだけに思えてならない。
徴用工訴訟の公示期限は8月4日。さらに、8月15日には、75年という節目の「光復節」(日本による朝鮮半島統治からの解放記念日)を迎える。夏本番に向け、まだまだ無謀な対日攻勢は続きそうだ。