かつてはTV番組でもある種の「華」としてしばしば取り上げられていた乱闘劇は、近年あまり見られなくなった。チームの枠組みを超えた交流の機会が増え、選手同士の距離が縮まったことがその理由とも言われるが、少々物足りない思いのあるファンも少なくないのではないか。
里崎智也氏の著書『プロ野球 里崎白書 Satozaki Channel Archive』(扶桑社)より一部を抜き出し、乱闘の裏側を覗く。
真剣勝負だからこそ起こる「一触即発」
かつては『プロ野球珍プレー好プレー大賞』のような番組の“華”でもあった両チーム入り乱れての乱闘劇。最近はめっきり少なくなりましたよね。
その理由としてよく挙げられるのが、侍ジャパンで一緒になったり、チームの垣根を越えて自主トレをしたり、選手同士の距離感がふだんから近いこと。いくら敵でも気心の知れた相手にはさすがに「オラーッ!」とはなりませんし、最近では外国人選手との契約に「乱闘はしない」といった条項が入っていることもあるようです。
とはいえ、試合は真剣勝負ですから、相手にナメられたまま黙っているようでは、プロとして名折れ。なんでもかんでも「まぁまぁ、穏便に」という態度でいると、自分の沽券、チームの士気にもかかわります。もちろん、ぼく自身も現役当時は、臆せずガンガンいく派(笑)。乱闘や小競り合いの多くが、内角攻めやデッドボールを発端とするだけに、捕手としてその当事者になることも多々ありました。
突っかかってきたら即応戦
たとえば、2007年のバファローズ戦で起こったタフィ・ローズとの一件(*1)。当時はインコースを攻めないと抑えられないローズや(グレッグ・)ラロッカに、けっこうぶつけてしまってね。彼らも相当イライラきてたんです。で、ローズの打席でも例によってインコースを攻めにいったら、こっちに砂をかけるように地面を蹴って、英語で何かを言ってきた。そこで負けじとばかりに「なんや文句あんのか、オラッ!」って言い返したら、いきなり殴りかかってきて押し倒された、というわけです。
*1 07年7月18日に千葉マリンで開催されたオリックス戦の3回表に起きた乱闘劇。内角への初球にローズが激昂。最終的にローズとオリックス側のコーチ2人が退場となった。
まぁ、あの試合では直前に、初回に当てられていたラロッカがベースカバーに入った清水直(行)さんに故意にぶつかって、小競り合いになるっていう第1ラウンドがまずあってね。ローズとしても「次きたらいったるからな」っていう気持ちがあったんでしょう。殴られたぼくも、馬乗りになってきた彼の腹にスパイクで一発、蹴りをお見舞いしてやりましたから、そこはお互いさまですけどね。