プロ野球の公式試合は、折からの新型コロナウイルス感染拡大の影響を避けるため中止されていたが、5月下旬、その再開が決まった。開幕戦は2020年6月19日を予定している。「無観客試合」とはいえ、野球ファンの望む日常が帰ってきつつあるといえるだろう。
ここでは、里崎智也氏の著書『プロ野球 里崎白書 Satozaki Channel Archive』(扶桑社)より一部を抜き出し、「名捕手の条件」について考える。
結果に結びつかなければ「名捕手」にあらず
いい捕手の条件とは何か――。そう聞かれたら、みなさんはなんて答えます? 「やっぱりリード、守備力でしょ」。この手の話題になると、よく聞きますよね。でも、ぼくの答えは違います。結局は「打つか、勝つか」。これだけだと断言できます。
だって、プロ野球の歴史を見渡してみてください。「名捕手」と呼ばれるOBの方々は全員、このどちらか、もしくは両方をクリアしていますよね?
野村克也さんは両方に該当するレジェンドですし、田淵幸一さんあたりもそう。かのV9を経験している森祇晶さんや、ライオンズの黄金時代を知る伊東(勤)さんは、誰より「勝つ」を経験してきた方です。比較的最近の古田(敦也)さん、谷繁(元信)さん、矢野(燿大)さんにしても、城島(健司)や阿部(慎之助)にしても、現役時代はそれぞれ強いチームで「打てる捕手」として鳴らした選手ですよね。
「リードの良しあし」は名捕手の条件ではない
そもそも、よく言われる「リードがいい」。それがどういうことなのかを具体的に説明できる人は、野球界にもまずいません(笑)。リードの良しあしなんてものは、常に結果からの逆算ですから、もし評価されることがあるとすれば、点を取られない=勝つこと以外にないのです。にもかかわらず、「いい捕手の条件は?」と聞くと、たいていの人が真っ先に「リード」を持ってこようとする。だからぼくはこれまで、しつこく言い続けてきたわけです。「リードは結果論でしかないですよ」って。
ぼくに言わせれば、プロ野球の捕手は、捕る(=キャッチング)・止める(=ブロッキング)・投げる(=スローイング)の技術が1軍レベルにありさえすれば、それでまったく問題なし。リードがモノをいうのは、その3つがしっかりできてからです。
だって、たとえば同じチームに菅野智之・大谷翔平・大瀬良大地・千賀滉大・有原航平・山本由伸の6人がいて、彼らでローテーションを回せるとしたら、もはやリードは要りません。何も考えなくたって、ある程度は勝てますしね(笑)。