新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が解除され、「新たな日常を取り戻すスタート」と宣言した安倍晋三首相。世界的に見ても日本の死亡者数は圧倒的に少なく、「『日本モデル』の力を示せた」と胸を張ってみせたが、一方で各種世論調査では内閣支持率は急落し、政府のコロナ対応を評価しない意見も目立つ。
安倍首相のコロナ対応は正しかったのか、どこかに間違いがあったのか。「総理を最も知る記者」と言われるNHK岩田明子解説委員が、「文藝春秋」7月号に特別レポートを寄せた。
どんな場面でも“布マスク着用”の安倍首相
岩田氏が「問題があった」とする一例が、一世帯につき2枚配布した布マスク、いわゆる「アベノマスク」を巡る対応だ。約466億円の予算が投じられたが、不良品の回収に追い込まれ、5月28日時点での配布率は約25%。厚労省は6月15日、全国でおおむね配布が完了したと発表したが、「今更必要ない」という声も出始めている。
そんな中、どんな場面でも布マスクを着用している当の安倍首相。その理由については、こう語っているという。
「マスク不足で大変な中、納期目指して生産や配送などにあたってくれた人たちに感謝したい。自分の顔にはやや小さいが、あの布マスクは5層で安全だし、洗えるので何度でも使えるということも示したい」
シンガポールやパリでも配布が決定したが……
確かに、CDC(米疾病予防管理センター)も洗濯可能な布マスクなどの着用を勧めており、シンガポールやパリなども日本に追随するように布マスクの配布を決定した。では、「アベノマスク」の何が問題だったのか。
岩田氏はこう指摘する。
〈例えば台湾ではIT担当相がマスクの在庫を厳格に管理するなどITを駆使していたが、日本はどうだったか。マスク転売で暴利を貪る行為には、国民生活安定緊急措置法などを早く適用すべきだったのではないか。何より「医療機関や介護施設などへ優先的に配布した上での各家庭への配布」という全体像がほとんど説明されなかったことが、国民の不信感を招いたのではないか〉