以前小欄で、屋外競技の部活生にはサングラスをかけさせるべき――という記事を書いた。日差しの強い屋外で、連日、しかも長時間スポーツをする中高生の目は、太陽光によるダメージを受け続けており、将来「加齢黄斑変性症」という失明を伴う目の疾患にかかるリスクが高まるのだ。
彼らは屋外でスポーツをやっているだけで、つねに太陽を見ているわけではない。つまり、彼らの目に入ってくるのは“直射日光”ではなく“反射光”だ。それでも目の病気を引き起こす危険性があるのだから、日食で欠けているとはいえ、太陽を直接見ることがいかに危険なことであるかがわかるだろう(反射光ならサングラスで影響を軽減できるが、直射日光は不可能)。
ちなみに、小学生の頃に「黒い下敷き越しに太陽を見れば安全」と教わった記憶がある人もいると思うが、平松医師によるとこれも「NG」とのこと。
「黒い下敷きが可視光線をある程度カットするのは事実だが、紫外線や赤外線などの不可視光線は透過してしまいます。すでに触れた通り、日光の48%を占める赤外線と紫外線をカットできない下敷きでは、目の被害を防ぐことはできないのです」
準備を整えて、天体ショーを楽しもう
日食のような自然現象を子どもに体験させて、「どうだ、すごいだろう」なんて、自分の手柄のように自慢しているお父さん。無邪気な子どもは大きな声で「うん!」なんて返事したりして、まるで建売住宅のCMのようで、微笑ましい光景です。
「父の日」の日食――。せっかく子どもに尊敬してもらえるチャンスなのに、誤った知識で大切なわが子の目にダメージを及ぼしてしまったのでは本末転倒。サングラスや下敷きで済ますのではなく、きちんと日食グラスを用意して、ついでにてるてる坊主もぶら下げて、準備万端整えた上で、天体ショーを楽しみましょう。