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嗚呼悩ましき横浜の外国人枠。そこで振り返りたい1987年の“PLL問題”

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/06/25
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ひと月に2人の外国人選手を失う前代未聞の事態

 しかし翌年就任した古葉竹識監督はローマンを評価しなかった。さらにオープン戦で不振だったこともあり、球団は開幕直前の4月1日に3人目の外国人としてシクスト・レスカーノの獲得を発表する。レスカーノはメジャー通算148本塁打とアメリカではローマンより格上だが、86年は夫人の病気もあって1年間プレーしていない。ショックを受けたローマンは翌2日以降のオープン戦を欠場。これに対して古葉監督は「やる気があるのかどうか。今は開幕戦で起用するつもりはない」(5日付神奈川新聞より)と厳しいコメントを残し、ローマンはレスカーノ入団前にもかかわらずファーム行きを命じられた。当然、四番を打つポンセは外せるはずもない。

メジャー148発の実績をひっさげ、87年4月に入団したレスカーノ。(月刊ホエールズ87年5月号より)

 ♪打て 打て 打てよローマン のフレーズ込みでローマンが好きだった筆者は子供ながらに「そりゃないよ」と思った。その後入団したレスカーノが4月20日のデビュー戦で4打数3安打を放つなどそこそこ打っても心は晴れなかった。素人目に見ても守備の動きは緩慢だし長打も出ない。5月9日の巨人戦で2本塁打を放ったのは流石だったが、それから全くヒットが出ずついに22打席連続無安打。そして17日には「140キロの球が打てず自信をなくした」「体が思うようについていかない」とレスカーノは突如現役を引退してしまうのである。

 誰もが呆気にとられた退団劇。のちに阪神・グリーンウェルが「神のお告げ」で7試合に出ただけであっさり引退した事件はあまりにも有名だが、大洋ファンはその10年前に同様の事態に遭遇しているのだ。

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デビューから1か月足らずでのレスカーノ退団劇を報じる87年5月18日付朝日新聞。 提供/黒田創

 ならば、ようやくローマンの出番……と思いきやそうは問屋が卸さない。プライドを傷つけられたローマンは5月3日付で「ホエールズのために役立てず残念です」(4日付神奈川新聞より)と退団。とっくにいなくなっていたのだから。でもローマンは最後まで尊厳を失わなかった。その証拠に4月のローマンの二軍成績は22打数10安打で打率.454。ファームとはいえちゃんと数字を残していたのだ。かくして、大洋はひと月に2人の外国人選手を失う前代未聞の事態に直面したのである。今思うと“レスカーノショック”は古葉大洋のつまづきの第一歩だった。

 ラミレスが監督を務めていることもあり、現在のベイスターズではまずこんなチグハグな事態は起こらないだろう。24日の中日戦でも野手3人が揃ってヒットを放ちパットンは1回1/3を危なげなく抑えた。あとは「オトコハダマッテナゲルダケ」のエスコバーが上でビシビシ抑えるのを待つばかりである。

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