中国で言論統制が行われる、中国らしい理由
これだけ中国経済が成長してしまうと、周辺諸国は子会社みたいなものです。アメリカでは白人至上主義者が大騒ぎしてシャレにならないことになってますけど、中国では民族主義的紛争はそもそも無かったことになる。反腐敗? 民主主義? 知らないなあ、ほんとに。なんせ13億人もの国民を食わせるためには、壮大な権力闘争を繰り広げて政治が常に盤石な体制でなければすぐに国家も社会もバラバラになってしまう。だからこそ、言論弾圧でも武力排除でもやって、社会の求心力をもっぱら経済の発展に据え続けていくという一点で、国民をまとめていくしかないのでしょう。政治に対する自由な言論は国内ではご法度なのは、中国の文化であり権力の源泉であって、これが失われると文字通りアヘン戦争や瓜分の危機という中国の歴史が教える悪夢が蘇ってくるんじゃないかと思います。
そういう国内事情で言論統制をしないといけないというのはまあ分かるんですが、いや分からないけど、同じように他国に対しても「そういう中国にとって都合の悪い歴史を教育するな」というのは中国らしいわけですよ。面倒くせー。かねてから、日本でも台湾問題を巡って「ひとつの中国」とかいう中国国内の政治的前提や建前にそった不思議な外交に翻弄されて困り果てたことはありましたけれども、こちらにとってはどうでも良くても中国にとっては台湾が国家として認められること自体が、チベット独立だ新疆ウイグル独立だ内モンゴル独立だとなって、経済成長がどうのといっている以前に中国共産党が率いる中国政府の崩壊につながる、と本気で信じているのでしょう。
お魚輸出を止められて、たちどころに干上がるノルウェー
先日も、ノルウェーですったもんだがありました。中国の民主化その他で頑張った活動家でノーベル平和賞を受賞した劉暁波さんが、患ったガンの治療を満足に中国で受けることができず軟禁状態となって、そのまま亡くなってしまったわけです。中国からすると民主化だ人権だと政府が困ることをする活動家に国内や海外から声望が集まると大変都合が悪いわけですが、このノルウェーの貴重な外交資産であるノーベル平和賞「後」を巡って、中国はノルウェーの基幹産業のひとつである養殖魚の輸入を全面的にストップさせるわけです。成長著しい中国市場へのお魚輸出を止められて、たちどころに干上がるノルウェー。
そこからもう、民主化だ人権だという西欧的価値観で中国批判なんて、もっての外なわけでございますよ。劉暁波さんが治療を受けられずガンで亡くなっても、その劉さんに国際的威信を授けたノーベル平和賞を擁するノルウェーは息を殺して静かにして、中国政府に楯突くことなどせず、じっと中国人のご家庭にノルウェー産の養殖サーモンが並ぶ日まで我慢をすることになるわけであります。