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2020/06/18

「変な空気になって本番であいつに冷たくされてもな……」

 吐き出すように渡部さんへの思いを語る児嶋さん。そして

「10年以上前にキレてケンカになったこともありますけど、あいつ頭いいですからね、理論武装されてなんかあんま響かなかったなってこともあって」

「振り返ればなんでお前そんなこと言うんだ、何だその俺に対する言い方は、愛なんにも感じねえぞということありました」

「その時に僕がちゃんと相方としてお前ダメだぞそういうのとか、スタッフさんに対してもとか、言っとけばもしかしたらこういうことにならなかったのかなとか……思いますけど」

「なんかあっても俺が言って変な空気になって本番であいつに冷たくされてもな……とかそういう情けない思いもあったりした、こういう僕の弱い部分もあいつを甘やかしたんだなって思ったりもしてますね」

アンジャッシュ児嶋一哉 ©文藝春秋

ここにも「渡部コントロール」が……

 ああ、ここにもまた「渡部コントロール」がありました。渡部さんは女性のみならず、相方をも言いくるめていたんだなって。頭の良さ、言葉の巧みさ、そして何より強い「売れてる」という事実が、正しいことを言おうとする人の口を塞いでいく。

「なんかあっても俺が言って変な空気になって本番であいつに冷たくされてもな」という如何ともしがたい力関係は、渡部さんの不倫相手たちのそれにも通じる気がします。この涙の放送の後、たくさんの芸人さんから「面白いのは児嶋の方だ」というような声が上がっていたし、爆笑問題もそのようなことをラジオで言ってましたし。ツイッターでも児嶋さんが抱えていた「コンビ間格差」に対する素朴な疑問は散見されました。

 おそらくですが、渡部さんはそれこそ巧みに、芸人にとっては「面白い」より「売れてる」方が価値が高いと、そういう空気を相方に対して醸成していったのではないでしょうか。いや、「面白い」という数値化しづらい感覚に対して、「レギュラー何本抱えてる」「年収はこれだけある」と評価軸がはっきりしている「売れてる」を「売れてる=面白い」と誘導させたのかもしれない。数字で、理屈でね。

 それがうまくいけば、児嶋さん自身が自信を持ちづらくなるし、「渡部がいないと俺はダメだ」と思うようになるだろうし、自分の行いに対して異を唱えるなんて絶対ないでしょう。周りがどんなに児嶋さんを評価したって、そう。渡部さんのそのあたりの見立て、誰に対してどんな風に振る舞えば自分が王様でいられるか、いや、王様でいられる相手は誰なのか、その目は残酷なまでに正確なんだなと思います。

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