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もやウィンで炎上…自民党が「進化論」と「変化」に20年こだわる理由

「改革=すべて善」の集大成

2020/06/23

 政治とSNSについて最近気になることばかりです。

 自民党広報のツイッター。こんな騒動が起きている。

《自民党がウェブサイトやツイッターで、ダーウィンの「進化論」と結びつけて憲法改正の必要性を訴える漫画を発信している。ツイッター上では「進化論を理解していない誤用だ」「政治に利用するのはこじつけだ」など、科学者を含む各方面から批判が相次いでいる。》(毎日新聞WEB6月21日)

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批判だらけの“進化論”

「もやウィン」というキャラクターが「進化論ではこういわれておる」として、「最も強い者が生き残るのではなく 最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である。」と憲法改正を主張。

自民党公式アカウントより

 しかし、

・引用されたのはダーウィン自身の言葉ではなく、1960年代に米国の経営学者がダーウィンの著書「種の起源」を独自に解釈して論文発表した「誤用例」とされる内容だった。

・岩波書店のアカウントは「進化論でよくある勘違いとして、『進化』=『進歩』ではありません。進化とは多様性の源なのです」

 など批判だらけになった(毎日・同)。

 今回の件、自民党広報をツッコむのもいいが、私がしみじみするのは自民党など保守側がここしばらく掲げてきた「改革=すべて善」というイメージの集大成がここにあるのでは? と思えることだ。

小泉元首相も進化論で「構造改革」を訴えた

 実は小泉純一郎元首相も2001年の所信表明演説で進化論を持ち出し「構造改革」を訴えたことがある。これに対し千葉聡・東北大大学院教授(生態学)は、

©︎文藝春秋

《「『生き残るのは変化に対応できる生き物』としていた当時の演説よりも、『変化できる者』とした今回はさらに改悪している」と問題視する。「適応というのはあくまでも結果であって、意図を持って変えることではない。生物学の考え方を政治に持ち込むこと自体に大きな問題があり、危険だ」と強調する。》(毎日・同)

 ここで考えたいのは、いつしか政治家が「改革」を訴えればそれだけでウケるようになったこと。保守を自認する側は確実な歩みや調整を訴えるのが筋だと思うが、とにかく「改革」「変化」は無条件でウケた。だから言葉の刺激がどんどん大きくなった。