カトリック長崎大司教区(高見三明大司教)で13年、実に2億5000万円もの献金原資の教会の金が詐欺的商法に注ぎ込まれていた問題で、大司教区はこれまで、信徒にさえ一度も説明していない。問題のない投資先だったというのか、それともA神父の不祥事を組織ぐるみで隠蔽しているのか。(全2回の2回目/前編から続く)
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「止められなくて申し訳ありませんでした」
19年2月、女性職員が糾弾された司祭研修会の場で、A神父の後任として、会計担当の法人事務所長に就任したB神父が口にしたと出席した関係者は話す。交代した14年以降、銀行口座の履歴を見れば、実態を知る立場にあったからだ。
B神父は、貴重な資料を残していた。K氏との間で「覚書」を交わす前日、弁護士(厳罰が相当と助言したのと別人)に対処法を問い合わせるにあたって、貸し出しや投資の経緯を時系列で書き記し、その根拠として、A神父が送って寄越した経過説明やK氏のメールなどの複数の文章を転載していた。例えば、「16年4月8日にA神父様からいただいた文章」として、「K氏への貸付金に関する説明」が枠囲みで載っている。
「中東で実績のあるK氏」とあるが……
〈13年8月(筆者注・「7月」の記憶違いか。以降も記録と記憶にはズレがある)にK氏が会いに来られ、法人事務所長の部屋で面談しました。K氏は、本業である医療測定機器の件で中東で仕事をしており、その関係で、フジャイラの石油ターミナル事業を手伝ってほしいと依頼されていました。(略)日本の投資を呼び込むために、中東で実績のあるK氏に依頼したようです〉
K氏が社長を務めたアール・アイ・イー社は確かに医療測定機器の販売を掲げる会社だが、アラブ首長国連邦の7つのうちの1つ、首長国フジャイラとのつながりがよくわからない。
確かにUAEは12年7月、イランがしばしば封鎖をちらつかせるホルムズ海峡を迂回して、陸上ルートでオマーン湾に運び出すパイプラインを供用させている(12年7月17日付朝日新聞)。フジャイラはその出口にあたり、投資を呼び込む時期であったことは事実だ。
カトリック信徒の献金がイスラム圏に流れる“違和感”
とはいえ何とも奇妙な話だ。
相手のUAEはイスラム教国である。その国家的プロジェクトに、わざわざカトリック信徒たちの献金を投じてくれという相談事そのものが、何度読み返してもあまりにも脈絡を欠いている。キリスト教徒がイスラム圏でお金を使ってはいけない宗教的な戒律があるわけではないが、常識的には「ちょっと待って」と違和感が先に立つだろう。