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 A神父の建前は「将来の教区のため」。確かに人口減少や信徒離れで年間の教区費(献金)は5年で4分の1以上も減少した時期である。信徒向けの広報誌にA神父が自ら、「このままでは(略)、小教区が金融機関から借り入れをしなくてはならなくなることも想定されます。そうなると、利息の支払いという新たな負担を、信徒に負わせることにもなりかねません」と書いている(カトリック教報12年12月号)。

教会堂建設のための積立資金が使われた

 もっともらしいが、本人の行動は正反対だ。高野山真言宗の場合は、曲がりなりにも証券会社を通じた運用だった(後に含み損も解消した)。これに対してA神父はろくな査定も約定も欠いた財テクに走り、組織的議決もなく信徒の金をあからさまな危険に晒していた。投資家気分に乗せられ、引き返せなくなっていた。

長崎・浦上天主堂 ©iStock.com

〈10月末、K氏から、「さらに1億の資金が必要なのだが、11月末にならないと調達できないので短期で融資してほしい。新たな出資者に会っていただいてもよい」と言われ、このままだと最初の1億がふいになると思い、12月になったら返すということだったので、さらに1億出資しました。(略)11月末が近づくと、「後の1億も投資したことにしてくれないか」という趣旨のことを言われましたが、佐々教会の建設がほぼ決まっていたので、「それはできない」と断りました〉

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 佐々教会は県北部の佐々町に14年4月に新設された教会だ。上記の弁明からはA神父の原資は、教会堂の建設資金で積み立てられていた特別会計だったことが読み取れる。銀行口座の金が底をつけば、自ら警告した通り、建設資金で銀行から借り入れなければいけなくなる。「その金利負担が数千万円に上った」という情報もある。A神父が穴を空けた金額は実にほぼ3億円に上ることになる。

出した金の1割も戻ってこなかった

 ここからは前述の「貸金についての返済請求計画書」にあった通り、結局、出した金の1割も戻ってこない。

〈15年5月から、Kさんは日本企業に事業参入を促し(略)ましたが、結果としてこれも実を結ぶことはありませんでした〉

「貸金についての返済請求計画書」

〈16年3月9日、(略)首長の甥が主導して、日本企業からの投資ではなく、(注・首都の)アブダビからの投資を得るために交渉を始めた、と報告があり〉

 こうして、K氏からの連絡は途絶えがちになってくる。