「政府が一番遅れていますよ。国民の生活や働き方をよりよいものにしようという意識が感じられないのです」

「文藝春秋」7月号のインタビューでそう語るのは、6月2日に就任2期目を迎えたばかりの中西宏明経団連会長(74=日立製作所会長)。

中西宏明氏 ©共同通信社

 経団連と政府の関係は、「車の両輪」のようなものと言われるが、そのイメージに反して、“財界総理”の口から飛び出したのは、政府への厳しい言葉だった。

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 中西氏が危惧する「政府の遅れ」とはいったい何なのか――。

政府の腰が引けている「コロナアプリ」

 政府が、新型コロナウイルスの感染拡大の防止策として6月20日に公開した「接触確認アプリ」。これはスマートフォンの近接通信機能(ブルートゥース)を利用し、陽性診断の確定者と濃厚接触した可能性が高い場合に自動通知を行うというものだ。

安倍晋三首相 ©文藝春秋

 安倍首相も会見などで「多くの皆さんにご活用いただきたい」と訴えていたが、中西氏はこう指摘する。

「このアプリも誰もが使うものですから、何より使いやすく、使う人の心理的なハードルの低いものにしないといけません。日本人はプライバシーについて敏感なので、その部分の不安を残したままでは利用者はなかなか増えないことは目に見えています。この不安を解消し、アプリを役立つものにしていくためには、政府が国民に向かってきちんとプライバシー保護に関して説明しないといけません。『個人情報は絶対に目的以外で使用しないので、どうぞアプリを使ってください』と強くお願いするべきなのに、マスコミからの追及を気にしているのか、政府の腰が引けている気がしてなりません。アプリをみんなに使ってもらおうという積極的な姿勢が感じられないのです」