昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

朝ドラ「エール」放送中断前に……一時視聴率20%割れ、自由すぎるストーリーに“賛否両論”の理由

試金石になるのは、戦時下の描き方

2020/06/29

 新型コロナ感染拡大の影響で、NHK連続テレビ小説「エール」は放送を一時休止し、6月29日より第1回からの再放送が始まる。ストーリーが中断する前に、2週にわたって「スピンオフ」を放送したことで、朝ドラファンの間では賛否両論が巻き起こった。スピンオフ週の視聴率は、一時6週ぶりに20%の大台に届かなかったという(第58回)。『古関裕而の昭和史』を著した近現代史研究者の辻田真佐憲さんが、多くの視聴者が抱えた違和感を分析する。

◆ ◆ ◆

白装束に三角頭巾で、音の亡父が

 正直、呆気に取られた。先々週に放送された、朝ドラ「エール」第12週の展開である。

 みていない人のため軽く説明すると、この週の前半、ヒロイン・音の亡父(安隆)が、白装束に三角頭巾で、妻や娘たちのもとに突如として現れた。あの世で「宝くじ」にあたり、1泊2日で地上に帰る許可を閻魔様にもらったのだという。

連続テレビ小説「エール」より

「なんだそれ」と思うかもしれない。筆者も正直そう思う。念のため言っておくが、今回の朝ドラは、昭和を代表する作曲家・古関裕而をモデルとする古山裕一の話であって、霊媒師やオカルティストのそれではない。

フィクションのなかで整合性が取れていない

 もちろん、朝ドラはフィクションだ。いくら古関裕而に関する本を出しているからといって、「これは史実と違うからダメ」「あれも史実と違うからダメ」と一律に文句をつけることが無粋なことも、十分承知している。

 それでも、である。この展開はさすがにないと思わざるをえなかった。それまでは、クラシックへの情熱、レコード業界での悪戦苦闘、家族との確執と死別など、ある程度、現実的で時代にも沿った展開だった。

ヒロインの音を演じる二階堂ふみ ©AFLO

 それなのに、これはあまりに唐突すぎた。そもそも、ヒロインの家は聖公会のクリスチャンという設定であるにもかかわらず、なぜ、閻魔様で、白装束なのか。フィクションのなかでも整合性が取れていないのではないか。

 こういう批判を見越してか、12週の冒頭では「突飛な設定や裕一と音の出ない回もありますが」などとナレーションが入る。しかし、そんな言い訳をするくらいなら、はじめから無理なスピンオフなど止めておけばよかったのである。