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キャップ配布は続けることに意味がある

 とはいえ、予算は莫大にかかる。キャップの製作は大手スポーツメーカーによるもの。CDマークの刺繍や素材にもこだわった。「詳しい金額は非公開なのですが、そこそこの予算をかけております」(平岡さん)。

 ではなぜ、ドリンクメーカーのポッカサッポロがプロ野球チームのキャップを製作して配布するのか? 2011年に発足した同社の「名古屋戦略部」が鍵を握っている。

「ポッカコーポレーション(当時)が生まれ育った名古屋に対して、何か恩返しができないかということでCSR活動などを行うために現在の社長肝入りで発足した部署です。我々は食品メーカーなので、『健康づくり』と『次世代応援』の二つのテーマを掲げて、自治体やスポーツチームと協力した地道な活動を積み重ねてきました。右から左へ大きなお金を動かすほどの予算はありませんからね(笑)」

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 名古屋戦略部が手がけてきた事業の一つは、2011年から続けているサッカーJリーグのジュビロ磐田の小学5、6年生の一斉観戦だ。同社グループの工場がある静岡県磐田市に協力し、磐田市が試合に招待した市内の小学生に同社が応援グッズとしてオリジナルのマフラータオルをプレゼントしてきた。

「最初の頃に一斉観戦をした小学生が成人になって、昨年はスタジアムで一斉観戦に来た小学生たちに応援の仕方をレクチャーしているそうです。やっぱり続けることに意味があるんですね。ドラゴンズのキャップの配布も6年間続けると決意表明していますが、私の個人的な気持ちとしてはずっと続けて配布していけたらいいなと思っています」

 そう力強く語る平岡さん。実は平岡さん以上の熱烈なドラゴンズファンである奥様に今回のドラゴンズのキャップの話をしたところ、「めったに褒めない妻が初めて『いい仕事したね』と言ってくれました」と笑う。お子さんとともに家族でドラゴンズ戦を観戦することも。平岡さんに今年のドラゴンズの順位予想をしていただいたところ、ためらいなく「優勝です!」と断言してくれた。

右からポッカサッポロ岩田前社長、矢野球団社長、河村名古屋市長 ©大山くまお

 2020年の夏、見てみたい風景がある。それはドラゴンズのキャップを被った子どもたちがナゴヤドームのスタンドに詰めかけること。……いや、詰めかけちゃいけないのか。ともかく、ソーシャルディスタンスを保ちつつ、小学1年生の子どもたちが声をからして選手たちを応援する。そんな光景が見たい。7月中には与田剛監督と京田陽太選手によるキャンペーン広告も出る予定だ。

 ドラゴンズのファン拡大、地元名古屋の盛り上がり、健全な青少年の育成、日常の風景の回復、そしてドラゴンズが強くなること。すべては一歩ずつ、一歩ずつ。ひとの想いがそれを支えていることがあらためてわかった今回の取材だった。

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