「一番弟子」山崎晃大朗に言いたいこと
一方の寺島は、公式アプリ用の動画でインタビューしたときは、いろいろ模索しているようでした。「焦りはあるけど、焦りが空回りしちゃいけない。自分の考えを持ってしっかり取り組みたい」と決意を語ってくれましたが、それが少しずつ実を結んできました。
レギュラーではなかった僕が言うのもなんですが、1軍で活躍するのには大切なことがあります。それは「自分自身に勝てる」こと。控えや1軍当落線上の若手選手って使われるとどうしても「ここで結果出さなくては」という考えになります。そしてちょっとしくじると「どうにかしなきゃ、どうにか……」という負のスパイラルにハマります。
それに囚われた選手は2軍に落ち、結果を出し「俺、これでイケるんだ」と思えた選手は1軍に残ります。そして「俺、イケるんだ」という確信を持って初めて、相手チーム選手と勝負ができるようになるんです。清水も寺島もきっと「俺、これでイケるんだ」と思えるものを掴んだんでしょう。
もちろん、失敗することも今後あるでしょう。でも自分を客観的に見られることのできる選手は、失敗を壁だと思って、それを自分の力で超えていきます。その壁を乗り越えられれば、さらに違う景色が見えるはずです。
清水と寺島は今、ようやく相手と勝負でき、少し違う景色を見られるようになっているはずです。僕は彼ら、若手投手の働きがスワローズの好調のカギを握ると思っています。
打撃のほうでは、僕の引退試合でなぜか胴上げされた、自他ともに認める僕の「一番弟子」山崎晃大朗が調子いいですね。前の4人が出塁率が高いので、高津監督はパンチ力があり、足がある山崎を5番打者に置いていると思いますが、彼も5年目でレギュラーを掴もうとしています。
僕の「潮干狩り仲間」でもある山崎。去年、僕の家族と山崎と松本直樹で潮干狩りに行ったら、なぜか畠山(和洋、昨年引退。現・2軍打撃コーチ)さんが突然2人の息子さんとともに現れて、山崎と松本が畠山さんの息子の世話をさせられるという「試練」も味わいました。「こんなハズじゃなかった……」と泣き言を言っていましたが、コロナ禍での自主トレ期間にも山崎をしごいていたという畠山コーチも今の活躍は嬉しいでしょうね。
でも山崎にはひとつ苦言を呈したい。ヒーローインタビューがつまらなすぎる。7月9日の中日戦で決勝タイムリーを打ってお立ち台に上がったのに表情も固く「優等生的発言」だらけ。今後もっとこうした場面が増えるはずですから、三輪の後継者として恥ずかしくないマイクさばきをぜひお願いします。彼の実力はまだまだこんなものではないので、皆さんお楽しみに。
最後に、24日からさまざまな制約があるなかでの神宮球場での「有観客試合」となりますが、皆さまに安全に野球を楽しんでいただけるよう、スタッフ一同万全の準備をしてお待ちしております。
雨天ノーゲーム時には、僕のもうひとりの後継者・宮本丈のヘッドスライディングでお楽しみいただけるよう、併せてお願い申し上げます。
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