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「現役」でも「元」でもない“まだ巨人ファン”のモノ雑誌編集長が綴る「2020年の楽しみ方」

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/07/22

 原辰徳監督が通算1034勝。長嶋茂雄終身名誉監督と勝利数でまさに並んだ翌朝にこの原稿を書いている。でも、そんな記念すべき試合模様を観戦したのは、「日テレG+」でも地上波のスポーツニュースでもなく、YouTubeの「DRAMATIC BASEBALL 2020」チャンネルのハイライト映像だ。

 プロ野球は大好きだ。特にチームを挙げれば、巨人がやっぱり好きである。何しろ生まれも育ちも東京で、子供の頃から地上波で見続けていたから当然だ。40年以上巨人ファンであると公言し続けているのは事実だし。2年ほど前に阿佐ヶ谷ロフトAで行われた「巨人ファン vs. 元巨人ファン」というイベントにだって顔を出し、イベントの主催者で、当時『巨人ファンはどこへ行ったのか?』を上梓した元・巨人ファンライターの菊地高弘氏らとも宴を共にした。

 だが、実は「巨人ファン vs. 元巨人ファン」どちらの言い分も分かるのだが、どちらにも大いに共感したかというとそうではなかった。自分は第三勢力である“まだ巨人ファン”という位置がちょうどいいと思った。

“まだ巨人ファン”にとっての本音

“まだ巨人ファン”にとって、毎日のようにリアルタイムで野球を観戦するほどの熱量はない。自宅のケーブルテレビで「日テレG+」にはしっかりと加入しているので、見られないわけではないのだが、「毎日見ろ!」と社会主義国家のように国から命令されるか、「見ないと逮捕!」みたいな国家安全維持法が施行された香港だったら間違いなく見るだろうが、ここは資本主義経済で巨人への発言も自由な日本。いつでも見られるが、日々仕事が忙しいので、むしろ毎日見ている暇はないというのが本音だ。東京ドームの最寄駅・水道橋に事務所スペースがあるにも関わらず。

 ただ、だからと言って、巨人のことが毎日見たくないわけではない。自分の自由な時間を使って、見られるものなら見たいというのが“まだ巨人ファン”にとっての本音である。

 だからこそ、スマートニュースの「読売巨人軍」タブは当然設定しているし、なによりもYouTubeこそが“観戦源”なのだ。YouTubeは当然毎月課金することによってプレミアム設定にしてある。なぜ無料でも見られるのにあえてお金を払っているのか? それは巨人戦をより快適にみたいから。ここでいう“巨人戦”とは巨人のこれまでの映像だ。いらない動画広告は全て排除。過去の巨人を物語る上で重要なエポックメイキングなシーンなどがあれば、そちらは全てダウンロードして、オフラインでも見られるようにしてあるので、資料的にも価値は十分高い。

 ……とちょっと意識高いことを言いつつも、実際は原辰徳や松井秀喜、岡本和真などの歴代の4番たちの勇姿がいつでもハイライトで見られるようにして、仕事で失敗した時には彼らを見てプライドを取り戻したり、ライターが〆切を守らなかったり、上がってきた原稿が酷かった時には、過去の珍プレー集などもしっかりダウンロードしてあるので、「プロ野球マジギレ集」「清原乱闘集」「CM 日本の牛乳J-Milk ガルベス」など、野球選手たちが罵詈雑言を吐く姿やカルシウム不足を見ながら、ゲラゲラ笑ったりしているだけだけど。(そういえば、最近のプロ野球って、乱闘自体減ったなーとか時代の流れを感じたり)

現役時代の原辰徳 ©文藝春秋

“まだ巨人ファン”にとって、実は2020年現在の巨人というのはそこまで重要ではない。あくまでも脈々と過去から続いている記録の現在進行形という位置付けであり、今日の勝ち負けに対して一喜一憂することもほぼない。昨年リーグ優勝した時も、その後日本シリーズで4タテをくらい惨敗した時も、心の中のマイ岡崎郁が再び「野球観が変わった」となりはしないのだ。

 それこそ、この本文冒頭に触れた試合では、丸佳浩がホームラン2本を含む6打点をあげて大活躍したとか、キャプテン坂本勇人がホームランを打ったとか、田口麗斗投手が3回まで完璧に抑えたのに脚の張りで降板したとかは、小さな一出来事である。もちろん原辰徳監督が通算1034勝ということも、だ。