(1)インフルエンザの流行ピーク時には、1日10万~30万人の患者が出ます。彼ら全員にコロナの検査をしないと、医療現場の医師や看護スタッフは怖くてインフルの診察もできなくなり、大混乱になるでしょう。
(2)院内感染を防ぐため、病院への新規入院者は、入院時に全員検査することが望ましいはずです(全国の新規入院者は、1日4.5万人)。
(3)海外の観光客を入れないと経済は復活できません。コロナ前の1割としても1日1万人です。
インフルエンザに対応するためだけでも、冬までに最低限、1日20万件は検査できる体制にしておく必要があります。
「検査を増やすと医療崩壊する」という誤解
検査を増やすと医療崩壊が起きるのではないか、という心配をされる方が多くいます。しかし、それも誤解です。
まず、来院する重症者や重篤者の数は、検査の数と関係ありません。重症者を自宅やホテルに居させることはできないので、検査数がどうであっても、病院で診なければなりません。
次に、軽症者や無症状者が大量に病院に押し掛けたら医療崩壊が起きる、と言われます。しかし、それを防ぐために、軽症者と無症状者は、ホテルなどの待機施設で療養することが基本になったはずです。ホテルなどの借上げを増やしておけば、医療の負荷は増えず、医療崩壊には至らないはずです(むしろ、ホテルの借上げ軒数、スタッフの人数などを計算して確保するための計画を立てるためにも、検査件数の数値目標が必要です)。
インフルエンザの季節まで時間はない
また、病院での検査を増やして、医師やスタッフや新規入院者を頻繁にチェックすれば、早めに感染者をみつけられ、院内感染が防止できます。これも医療の負荷を減らします。
さらに、検査を増やして軽症者を早期発見できれば、適切に早期治療でき、重症化を防ぐことができます(たとえば、体温や栄養の管理などを適切に行って体力を衰弱させなければ、重症化しないというのが医療現場の実感だそうです)。したがって、検査で早期発見することは、重症者の発生を減らし、医療現場の負荷を減らすことになります。
このように、検査を拡大することは、医療崩壊をもたらすのではなく、医療の負荷を下げて、よりよい医療提供体制を作ることになるのです。
インフルエンザの季節まで、あまり時間はありません。夏になって感染が落ち着いているいまこそ、数値目標を立てて、計画的に、医療と検査の能力増強を進めなければならないのです。
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小林慶一郎氏の「『検査・追跡・待機』こそ最大の景気対策だ」は「文藝春秋」7月号および「文藝春秋digital」に掲載されています。
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「検査・追跡・待機」こそ最大の景気対策だ