最も犠牲を被ったのは「先進国の若い世代」
〈グローバリズムの恩恵を最も受けてきたのは、現在の高齢者、戦後のベビーブーマーの世代で、最も犠牲を被ったのは、「先進国の若い世代」です。あくまで冗談めいた比喩ですが、死者が高齢者に集中しているのは、あたかも「グローバル化のなかで優遇されてきた高齢者を裁くために、神がウイルスを送り込んだ」と見えなくもありません。
ただその一方で、高齢者たちが、依然、力関係で優位にあることも示されました。全人口にロックダウンを強制して、低リスクの「若者」と「現役世代」に犠牲を強いることで、高リスクの「高齢者」の命を守ったからです。もちろん、「老人を敬う」のは、健全な社会の証なのですが〉
その上で、トッド氏はこう述べる。
〈新型コロナが露見させたのは、GDPの空虚さです。高いGDPを誇っても、産業が空洞化した国は、いかに脆いかが明らかになりました〉
〈産業空洞化で新型コロナの被害が大きかった先進国がすぐに取り組むべきは、将来の安全のために、産業基盤を再構築すべく国家主導で投資を行うことです。これは、いま話題の「ベーシックインカム」などより重要です。問題は「生産力」だからです。投資に加えて、国内の医療産業を保護する措置も採るべきでしょう。フランスについて付け加えれば、ユーロから脱却して、国内投資のために独自通貨を取り戻すべきです〉
◆
今回の新型コロナの危機に“グローバリズムの帰結”を見るトッド氏の「犠牲になるのは若者か、老人か」の全文は、「文藝春秋」7月号および「文藝春秋 電子版」に掲載されている。
※「文藝春秋」編集部は、ツイッターで記事の配信・情報発信を行っています。@gekkan_bunshun のフォローをお願いします。
犠牲になるのは若者か、老人か